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春菊天には2つのタイプがある
さて、そばの話に戻ろう。「丹波屋」では春菊天そば(380円)が全注文の半数位を占めるというから驚きだ。老舗そば屋では春菊天にお目にかかることはまずない。
寄せ鍋などでは春菊は後回しになることが多いと思うが、ここでは一番人気。食志向は面白いものだと思う。大衆の味なのだ。
春菊天は主に二つの作り方がある。一つは茎から葉っぱを残してそのまま揚げる手のひらタイプ。有楽町帝劇ビル地下二階にある「都そば」がこのタイプ。もう一つはすべてをきざんでかき揚げ風にするタイプで、水道橋「とんがらし」や「丹波屋」がこのタイプだ。
春菊は油で揚げると、特有のにおいが飛んで、香味系の味がほどよく残り美味しさがアップする。
バジリコのかわりに春菊のみじん切りを使ったパスタもすごく旨い。是非、試してほしい。台東区二長町にあるラーメンの名店「天神下大喜」の店主、武川さんは、鶏そばなどにみじん切りした春菊を薬味として入れている。青ネギのみじん切りかと勘違いするくらいほのかな香味が上質である。
訪問した平日の午前中でも、大大将がたくさんの春菊に天ぷらのどろをあわせて、忙しく揚げているところだった。
シンガポールから来たカップルも春菊うどんをうまそうに食べている。海外の情報紙やネットにも掲載されているのだろう。最近は外国人の客が増えているそうだ。春菊天の香りは格別でつゆまで飲み干してしまうほどだ。春菊は初冬の頃からうまくなる。