脚本を書いたムン・ジウォンは、これが初めてのドラマ作品だ。2016年に「ロッテシナリオ公募展(現在はロッテクリエイティブ公募展)」で大賞を受賞し、この作品は2019年、映画『無垢なる証人』(日本では20年公開)として公開された。殺人容疑者の弁護人と、殺人事件の唯一の目撃者である自閉症の少女の物語で、観客動員数は250万人ほどと少なかったものの、当時、大きな反響を呼んだ。
強い正義感、生真面目さ、特定の分野への博識……
映画の中で主人公の少女ジウは、「私はたぶん弁護士になれないと思う。自閉症だから」(映画『無垢なる証人』)と話しており、韓国ではこのジウが成長した姿がウ・ヨンウではないかとも囁かれた。『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、ドラマの監督が脚本家のムンへ、「ジウの続きを書きませんか」と提案したことが始まりだったそうで、ただ、ムンは記者懇談会(7月26日)で「ウ・ヨンウとジウは別の人物」として、こう語っている。
「視聴者がウ・ヨンウを好きになる理由が、かわいそうや不憫だからではなく、愛らしくて逞しくて、かっこよいから応援してくれるようにと思いました。
自閉スペクトラム症を持つ人が登場する物語を書こうとすると多くのクリエイターは障害を持たない人物を話者として、その人物の視点から描写しますが、ウ・ヨンウを単独の主人公として、視聴者とウ・ヨンウが直接コミュニケーションしてほしかった」(聯合ニュース、7月26日、以下同)
そして、こうも話している。
「すべての自閉スペクトラム症を持つ人が当てはまるわけではないですが、独特な思考、突飛さ、強い正義感、生真面目さ、特定の分野への過剰にも見える博識、記憶力などは自閉スペクトラム症により強化された人間の特性で、こうしたところが魅力的だと思いました」
脚本が完成するまで2年を費やし、ウ・ヨンウの細やかな描写には幼児特殊教育の専門家の助言を受けたという。この専門家は韓国紙の取材にこう語った。
「共感とコミュニケーションに課題があっても、一部の自閉スペクトラム症者が特定分野に見せる高い集中力、そうした長所を中心にアプローチし、不足していたり、助けだけを受ける典型的な障害者という型を破りたかった。法廷に立つウ・ヨンウはテンプル・グランディン博士の講演を参考にしました」(韓国日報、7月24日)
テンプル・グランディン博士(74歳)は自閉スペクトラム症を持つ、世界的に知られた米国の動物学者だ。