是枝裕和監督の初の韓国映画『ベイビー・ブローカー』が6月24日、封切られた。韓国では6月8日に上映が始まり、7月7日までおよそ125万人の観客を動員。韓国で公開された是枝作品では『万引き家族』の17万人が最高だったが、その記録を大きく塗り替えている。
ソン・ガンホ、ペ・ドゥナ…豪華すぎるキャストが話題に
是枝監督は韓国では「家族映画の匠」(ソウル新聞、2018年7月31日)といわれ、ファン層は厚い。
俳優の間でもファンが多く、映画公開に伴って行われたパーティには是枝監督に会うためにたくさんの俳優が足を運んだ。業界関係者は、「作品にも通じますが、監督本人が醸し出す穏やかな雰囲気に現場でも魅了される俳優が多いと聞きます」と話していた。
そして、とにかく豪華なキャスティングも話題になった。是枝監督が、「釜山映画祭のエレベーターで遭遇し、ずっと一緒に映画を撮りたいと思っていた」(スポーツ韓国、7月3日)というソン・ガンホ(『パラサイト 半地下の家族』2020年、『タクシー運転手 約束は海を越えて』18年など)。
さらに、「『空気人形』で仕事をし、いつか必ずまた映画を撮ろうと会うたびに話していた」(同前)という実力派俳優ペ・ドゥナ(『グエムル ー漢江の怪物ー』06年、『空気人形』09年など)や人気俳優カン・ドンウォン(『新感染半島 ファイナル・ステージ』21年など)とスターがずらり。
なかでも注目を浴びたのは、「時代のアイコン」と呼ばれる人気歌手IU(俳優名はイ・ジウン)のキャスティングだ。IUはドラマ『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』(18年)での演技が評判となったが、是枝監督もこのドラマを見て抜擢したという。そのIUも是枝監督ファンだったと伝えられている(亜州経済、7月4日)。
カンヌ国際映画祭で男優賞も しかし映画評は…
公開前の5月にはカンヌ映画祭で観客から12分近いスタンディングオベーションを受け、主演のソン・ガンホが韓国人俳優として初めて男優賞を受賞したことなどが韓国では華々しく伝えられた。このニュースから映画への期待がさらに高まり、観客動員も上々となったが、映画評はかなり辛いものになっている。
『ベイビー・ブローカー』は、ベイビーボックス(赤ちゃんポスト)に置かれた赤ちゃんをこっそり売買するブローカーと、子供を手放そうとしながらも揺れる母親、そしてブローカーを現行犯逮捕しようと一行を追う刑事の風変わりな旅の物語だ。