韓国の大手ポータルサイトNAVERを見ると、観客の7割は20~30代。筆者が映画館で観た際も20~30代と覚しき観客がほとんどだった。
映画の評点は10点満点中平均6.75点で、1点や2点をつけたユーザーも少なくない(7月8日現在)。これまで韓国で上映された是枝作品には見られなかったことだ。
書き込み欄には、以下のような辛口評が並んだ。
「マジでカンヌ12分スタンディングオベーションは集団催眠にかかったのか」
「構成が雑すぎる。一人暮らしが流行りの韓国で家族の崩壊がどれだけ迫ってくるかは分からないし。唐突に捨てられた子ども……守ろうよ、わたしたちが? だから、何を言いたいのか本当に分からない」
「善意というには彼らの下心が疑わしいし、カネ目当てというにはあまりにも善良。ひと言でいうとああでもなくこうでもなく、共感はもちろん尊重も難しい」
「だまされたという言葉しか……。人身売買の美化というところから痛い。日本の感性映画特有の叙情的なふり、教訓を詰め込んだ古くさい台詞も堪えられなかった」
映画ジャーナリストは「韓国化されてしまった演出が残念」
映画ジャーナリストは概ね6~8点の評点をつけた。その一部を抜粋しよう。
「『万引き家族』につながる代替家族の話であり(中略)是枝裕和の専攻分野と思わせる素材とメッセージがぎっしり詰まっている映画は、しかし不思議なほど余韻も、深みも、感動も、密度も平凡だ。
監督の個性が“韓国のもの”と出合って生まれる新しいエネルギーを期待した立場としては、何か韓国化されてしまった演出がとても残念にも思える」(ジョン・シウ、映画ジャーナリスト)。
一方で、「確かな答えを探せるはずはなく、ひたすら明るくもなかったけど……。それでも彼らが幸せになることを願う映画だった」や「(登場人物が)みな本当に存在している人物かのような演技がとてもよかった」というように俳優の演技を賞賛する好評もあった。
日本映画が持つ独特の表現などは是枝ファンではない一般の観客にはうまく伝わらなかったのかもしれない。筆者も、今回はこれまでの是枝作品のような繊細さが感じられなかったが、それでも、見終わった後はベイビーボックスを巡りさまざまな問いかけをされたように思い、その余韻は長く続いたのだが。