今回の戦争でロシア人の友人を多数失った
小泉 ロシアの軍事理論家の書くものをよく読むんですけど、彼らも2014年以降に本当にすっかり変わりました。
それまでもアメリカの覇権に対する反感はあったし、「戦争に見えない戦争」といった議論もあったけど、それが公然と「アメリカがロシアを弱体化させるためにやっている戦争」という前提で彼らも書くようになってきているので、もう我々と根本的な世界認識からして話が通じなくなっている感じで、中国もそっくりなこと言ってるわけです。
ユーラシアの強力な大国が根本的に我々と違う世界観を持っている時代で、どう関係を築いたらいいのか、途方に暮れてしまいます。僕は今回の戦争でかなりロシア人の友人を失ったんですけど、本当に話が通じないんですよ。アメリカが挑発した戦争なんだみたいなことを言うわけで、「本当にそう思う?」と聞くんですが、彼らは本当にそうだろうって言うわけですよ。
――ロシア人の友人を失ったとのことですが、『ロシア点描』に出てくるのは、普通の人たちの営みというか、ちょっとぶっきらぼうでとっつきにくいけど、親しくなると非常に近しい。親切で優しいという話でしたが、そこと話が通じなくなってしまったロシア帝国的な論理に乗っかっている部分のロシア人というのは先生の中で地続きなんですか?
小泉 まあ、地続きなんですよね。我々が考えるような「優しさ」ではない。なんかこう、あけすけな人たちですよね。目の前にお前がいるんだから良くしてやるよ、みたいな素朴な優しさもあるし、ここは歴史的にもオレたちのシマだろうみたいなのもあるし……。
要するに、古い人たちなんです。ある意味じゃ人間らしい。あんまり難しいことは言わない代わりに、融通とか人間らしい優しさとして発揮される場合もあるし、「おまえらまだ21世紀にこんなことやってるのか」みたいなとんでもない暴力性であるとか、侵略性になる場合もあるし、そこは裏表なんだろうと思います。