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“結婚していないパートナー”の相続

 最近では結婚していなくても、同居しているパートナーがいるケースも多い。なんだか疎遠になった兄弟姉妹に財産が引き継がれるくらいなら、パートナーに財産をすべて相続したいという人もいるだろう。だが何もせずに死んでしまうと法律上は、どんなに長期間にわたってパートナー関係を築いていても、パートナーが相続する権利はない。長年連れ添ったパートナーが相続発生後に相手の財産を相続したい場合には、家庭裁判所に申請して特別縁故者に認定してもらう必要がでてくる。

 ところが特別縁故者に認められるには、ハードルが高く、事実上配偶者として考えられるような長年にわたる内縁関係がある、介護や看護で特別な貢献をしていたなどといった事実を証明できないと認められないケースがほとんどだ。

 おひとりさまが後顧のことを考えずに亡くなると、思わぬトラブルが発生する。

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 まず、親しい人がいない場合、彼や彼女がいったいどれくらいの財産、あるいは借入金を持っているかがわからない。財産の内容を把握し、これを取りまとめる人がいないとまずここでトラブルが発生だ。

 銀行預貯金くらいならまだしも、生命保険、有価証券、投資として所有していたワンルームマンション、投資のために調達したローン残債、などなどすべてを把握する必要がある。中には隠し預金や登記されていない不動産など、いきなり登場した、たいして親しくもない相続人ではその全容をつかむことが難しい。相続財産の全体像がわからなければ遺産分割協議も進められない。

準備がなければトラブルを招く

 おひとりさまは結構、独自の趣味に拘っていて部屋を自分の好きなグッズなどで一杯にしていたりもする。「家じまい」だけでも一苦労だ。

 法定相続人である兄弟姉妹が現れても、疎遠になっていたり、必ずしも仲がよくなかったりする。家じまいを誰がやるかでももめごとになりがちだ。高齢な兄弟姉妹になってくれば、認知症になっているケースもある。この場合には後見人などを指定する必要がある。亡くなっていれば、もっと疎遠な甥や姪まで登場してきて混迷の度は深まるばかりだ。

 グローバル社会を反映して、兄弟姉妹の中には海外在住の人なんかもいる。皆が一堂に集まって遺産分割協議をやり、全員が納得して遺産分割協議書にサインするまで途方もない道のりが横たわっているのだ。

 そしてなまじお金持ちだったりすると大変だ。遺産分割協議において兄弟姉妹間で争い勃発。現金や預貯金だけが欲しいと主張する長女、父親から相続していた彼らの実家なんていらないと主張する次男など混乱の極みとなる。

 ここで登場するのが、おひとりさまが長年連れ添ってきたパートナーの存在だ。パートナーも突然出てきて遺産分割を始める兄弟姉妹をモヤモヤした気持ちで眺めているかもしれない。

 おひとりさまは自分の死後にこうした無用な混乱、トラブルを招かないように事前に対策をたてておく必要があるのだ。