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希望があれば、遺言書を作成すべき

 さておひとりさまがまず自覚することは、自分が亡くなった場合、相続する可能性がある相続人(法定相続人)がいるのかどうかを正確に把握することだ。

 相続人が誰もおらず、自分が相続させたい人も見当たらない場合、じたばたする必要はない。遺産はすべて国庫に納付される。

 たとえばパートナーに自分の財産を渡したい、お世話になった特別な人に自分の意思として財産を相続させたい、兄弟姉妹の中で特に仲が良かったひとりにたくさん財産を引き継がせたいなどといった希望がある場合には、このことを記載した遺言書を作成することだ。

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写真はイメージ ©iStock.com

 特にパートナーに渡したい場合、遺言書を残しておかないと、相続が起こってもパートナーには法定相続分がないため、特別縁故者の申請をしなければならなくなる。だが、遺言書でルールに則り記載しておけば、パートナーは財産の一部を相続することが可能になる。また遺言書には財産目録を記載するので、財産のありかを巡って混乱することも少なくなる。

 ただし法定相続人には法定相続分の一部にあたる遺留分があるため、すべてをパートナーやお世話になった人に相続することは叶わないものの、遺言書によって自身の意向を十分に反映させることができる。ちなみに兄弟姉妹、甥、姪になると遺留分はない。

あなたの財産を本当に譲りたい人へ

 遺言書の作成をはじめ、相続にかかわる一連の手続きは煩雑だ。そろそろこうした作業をするのが億劫になっている人も多いのではないだろうか。また、遺言書は定められたフォーマットどおりに、基本的には自筆で作成をしなければならない。

 体力的にも、また認知症の心配もある場合には、早めに任意後見人を定めておくことも必要だろう。後見人は自分が全幅の信頼を置いている人にお願いしてもよいし、弁護士や司法書士といったプロを選任しておくと、後々の財産処分や相続税対策の事前実施などにも役立つ。

 おひとりさま相続の悩みはこれからの日本社会に確実に起こってくる問題だ。でも考え方を変えれば、昔と異なり少子化社会では、自分が本当に財産を相続したい人を、遺言書でしっかりと定めることがしやすい時代になったともいえる。相続人が大勢いると財産が分散してしまうが、相続人が少ない、あるいは存在しないようなケースが増える現代日本では、財産を本当に譲りたい人に喜んで相続させるチャンスの多い社会の到来ともいえる。

 おひとりさま相続は入念に準備さえしておけば、理想的な財産配分ができる。さて誰に自分の財産をあげるのか、わくわくの遺言書を作っておくこと、超おすすめである。