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まるで一人の時を狙われたよう

「7月中旬の朝9時頃でした。私は1階のリビングにいて、2階から飼っている猫が階段を降りて来たと思ったらサルだったの。びっくりして追い払おうとしたんだけど、服を掴まれたり、乗っかられたりしてようやく逃げて行きましたが、パクッと指を噛まれてしまいました。今も腫れていて少し痛みがあります。いつもは家族がいるのですが、その時は私だけで、まるで一人の時を狙われたようです」

サルの下りてきた階段を見つめる80代女性。自宅に一人でいるところを狙われた ©文藝春秋

 7月28日の午後7時20分頃、70代の女性が捕獲される直前のサルに襲われた。指の骨を折り、瞼を10針縫う大ケガを負った際の恐怖の一部始終を証言する。

「ベッドで横になってテレビを見ていたら、10センチほど開けていた台所の網戸からサルが入ってきたようです。テレビに気を取られてまったく気づきませんでした。気が付いたら目の前に大きなサルがいて、怖いと思いましたけど、強気に行かないといけないと思って近くにあった掃除機を振り回しました。それでもなかなか出て行こうとせず、その時にサルと揉み合いになって、右足の太ももやふくらはぎを噛まれ、引っかかれて瞼を切って左の指も骨折してしまいました。10分ほどの出来事でしたが、サルが逃げて行った後に部屋中が血だらけになっていて、命の危険を感じました。まだ町をうろつくサルがいるかもしれないので、怖くて怖くて買い物にも行けません」

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サルに襲われた70代の女性。噛みつかれ転倒、骨折の大ケガを負った ©文藝春秋

これまでも目撃情報はあったが、人に危害を加えるケースは初めて

 住人を襲い続けたとされる2匹のサルが捕獲されて以降、人的被害は出ていない。住民らは平穏な日々を取り戻して、安心して暮らせるのだろうか。現在のサルによる被害状況と最新の目撃情報について山口市有害鳥獣対策室に問い合わせた。

「7月28日の夜に2匹目が捕獲されて以降は、小郡地区では7件程度のサルの目撃情報があります。負傷者については、7月29日正午までの段階でのべ66件で、それ以降の被害の発生や負傷者の情報は入ってきておりません。現在も注意喚起を続けながら引き続き職員の方でパトロールや見回りをしております。山口市には多くの山間地域が隣接していて、これまでも毎年、サルの目撃情報はありましたが、人に危害を加えるというケースは初めてです」

サル害のあった山口市小郡地区は山と畑に囲まれている ©文藝春秋

 なぜ山で暮らすはずのサルが住宅街に姿をあらわし、よりにもよって民家にまで侵入してくるのか。動物研究家のパンク町田氏は「群れにいられなくなり、居場所を失ったサルが民家へと領土を広げている」と指摘する。