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「心が死ぬのが先か、身体が死ぬのが先か」

 このように話し合いによる簡単な手続で離婚ができることもあり、日本全体の離婚のほとんどがこの協議離婚です。ワタシから離婚したいと伝えられたアナタが自分も離婚したいと応えれば、離婚届による協議離婚は成立です。

 しかし、そうではない離婚したいワタシと離婚したくないアナタの場合、どうすれば離婚できるのでしょうか。離婚したいワタシがあきらめるということは、離婚したい気持ちを我慢して抑えこむということです。でも、離婚したい気持ちが我慢できないほどに切実で、離婚できないと考えるだけで心も暗くなり身体も重くなるような場合、離婚したいワタシにとって、心が死ぬのが先か、身体が死ぬのが先かの結婚生活の続行となります。

 それでは離婚したくないアナタが「わかった、離婚しよう」となるまで死にそうな思いで説得するしかないのでしょうか。離婚したくないアナタを抑えこんで強制的に離婚させてくれる誰かはどこかにいないのか……。そうです、そういうときの誰かが裁判所なのです。

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 裁判所が判決で「ワタシとアナタは離婚しなさい」と離婚を命令する判決を出し、その判決が確定すれば、いくらアナタが「離婚したくないー!」と役所の入り口で駄々をこねて騒いでも、それを抑えて離婚が成立します。

 しかし裁判所は離婚したいワタシの気持ちも、離婚したくないアナタの気持ちも、どちらもひとりの人間の感情として平等に扱います。そうそう安易に「アナタの気持ちは、たいしたことない。ホレ、我慢しなさい」と言うことはできません。だから法律は裁判所が軽はずみに離婚判決を出さないよう、法律が定める特別な離婚の理由があると裁判所が判断したときだけ離婚の判決が出せるとしています。巷でよく言う「不倫したら即離婚」とか「別居○年で離婚できる」というのは、いずれも裁判で離婚するための特別な理由の話です。

 しかも法律は強制的な裁判離婚には慎重です。離婚を求める裁判を起こすために、まずは裁判所で離婚について話し合う離婚調停をすることを原則として求めます。離婚調停の話し合いでもどうにも解決ができないときだけ、離婚したいワタシが原告となり、離婚の裁判を提起することができるのです。

 離婚したいワタシたちなら離婚届を出しさえすれば明日にでも離婚できるのに、たとえ50年間別々に暮らしていたとしても、離婚したいワタシと離婚したくないアナタの組み合わせとなってしまえば、離婚調停、離婚裁判という長い道のりを経てしか強制的な離婚にはたどり着けないということです。

 クス子の性格では、理由も告げずに「とにかく離婚したい」と夫に言うことはとてもできなかった。かといって夫に面と向かって夜の生活の話をすることもできない。このまま自分が、我慢をするよりほかないのかという思いだった。弁護士が言った「心が死ぬのが先か、身体が死ぬのが先か」という言葉が胸に突き刺さった。