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2022/08/17

 アベノミクスは「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」という3本の矢を放ち、デフレを解消し、長期停滞が続く日本の再浮上を図った。

 黒田東彦日銀総裁による異次元緩和で、円安、株高は進んだものの、物価上昇率2%という目標は当初想定の2年で達成できず、安倍は次第に金融政策に興味を失い財政政策へと傾斜。官邸を去ってのちは自民党内にできた財政政策検討本部の最高顧問として積極財政の旗を振った。

黒田総裁の「再任セレモニー」

 そもそもアベノミクスとは何だったのか。安倍はなぜ財政政策にシフトしたのか。この経済政策はこれからどうなっていくのか。安倍なき今、次期日銀総裁選びはどうなるのか――。これらを検証するため、時間を4年前に戻すことにする。

日銀の副総裁・雨宮正佳氏

 春の宵、日銀総裁の黒田が首相官邸を訪ねてきた。

 18年4月9日。この日は総裁としての再任セレモニーが行われる。今後の5年間も日本の中央銀行の責任者として黒田を据えることが国家意思として正式に表明されるのだ。日銀総裁の再任は第20代の山際正道以来のこと。

 金融政策を重視する主張を安倍に見込まれ、アジア開発銀行(ADB)総裁から13年に就任した黒田1期目の評価は、毀誉褒貶の激しいものだった。物価上昇率2%には当初黒田が言っていた2年どころか1期5年の在任中に届く気配はなく、16年に導入したマイナス金利は金融機関の怒りを買い、長期金利の操作にまで手を広げたイールド・カーブ・コントロール(YCC)政策という新しい手法を実施に移さざるを得なくなっていた。

 再任となった黒田が通されたのは官邸内の「小会議室」と呼ばれる部屋だった。安倍と黒田のほか、財務相の麻生太郎、官房長官の菅義偉、経済財政担当相の茂木敏充も集まってきた。安倍のスケジュールの関係で、この日はお尻が切られている。黒田の再任セレモニーは午後5時50分過ぎから20分程度の短いものになった。