山田孝之に対して視聴者が「ボケ」たという出来事
スキマ 今年は高橋一生の他に、竹内涼真のブレイクもありましたよね。『ひよっこ』『過保護のカホコ』。
ササダン 『陸王』でも走ってます!
エスム 『過保護のカホコ』の竹内涼真くんのキャラ設定は、もう個人的にはすごいツボで、毎回キュンキュンしてました。
スキマ 同時期に出演していた『ひよっこ』の紳士的な青年とは真逆の、上から系のキャラクターでしたからね。
岡室 そうそう、あのギャップがよかった。
エスム 脚本は『家政婦のミタ』の遊川和彦さんでしたが、遊川さんのドラマって、割とオカマ的に心惹かれる男子キャラクターを出してくるんですよ(笑)。
スキマ あと個人的には山田孝之のことも触れておきたいんです。特に今年はテレ東系で『山田孝之のカンヌ映画祭』『破獄』『緊急生放送! 山田孝之の元気を送るテレビ』って、それぞれタイプの違う作品で存在感を発揮してたので。
エスム あ、私も『カンヌ映画祭』は今年のベストの一つですね。芦田愛菜、村上淳の「使い方」含めて、テレ東的な「何をやるんだ」というワクワク感がたまらなかった。
スキマ これまでの、テレ東深夜の山田孝之ドラマって『勇者ヨシヒコ』もそうですけど、ツッコミ不在で、視聴者がツッコミ役になるようなものが多かったんです。でも『元気を送るテレビ』は、初めて山田孝之に対して視聴者が「ボケ」として参加することになったんです。画面に向かって山田孝之が気を送ると、「シャワーの出がよくなりました」とかツイッターでみんな反応するという(笑)。
ササダン 「子どもが初めて寝返り打ちました」とか、SNSでボケ合うみたいな。
「テレ東深夜」が他局の別時間帯に広がっていった
岡室 まさにそこに「テレ東深夜的なノリ」、送られてくる「気」じゃないですけど、届く人には届くんだという文化があると思うんです。その意味で、私が今年印象深かったドラマに『ハロー張りネズミ』があります。大根仁さんの脚本と演出でしたが、原作は弘兼憲史さんの漫画。この漫画もそうだったんですが、とにかく無節操というか、人情ものの要素、SFの要素、サスペンス、オカルトものと、毎週違うスタイルを遊ぶドラマになっていたので面白かった。思ったほど数字は取れなかったかもしれませんが、大根さんがテレ東で培ったものが全部投入されている感じがしました。録画視聴の時代とはいえ、これを金曜夜10時に放送したという意義も大きい。
スキマ 『サラリーマン佐江内氏』は日テレ系土曜9時でしたが、これもテレ東深夜枠的な匂いがするドラマでしたよね。
岡室 そう、「テレ東深夜」が他局の別時間帯に広がっていった感はあります。
スキマ 確かにここ数年、自由で実験的なドラマといえば「テレ東深夜」という感じだったと思いますが、今年はそれに新たな潮流が加わったきがします。Netflixと組んだ『100万円の女たち』とか、Huluで先行配信されたバカリズム原作・脚本・主演の『架空OL日記』とか、FOD(フジテレビオンデマンド)で先行配信された『ぼくは麻理のなか』とか。動画で先行配信した後に、地上波深夜でやるドラマで秀作が多かったと思います。
あと毎日放送制作の『光のお父さん』は、すごく新しかったです。原作は『ファイナルファンタジー』をプレイしていることを書いたブログなんですけど、オンラインゲーム上で父と息子が正体明かさずに出会って交流するって話。プレイ中のゲーム画面でも演技をするみたいな世界で……。主演は大杉漣と千葉雄大。
岡室 一方で伝統的なNHK連続テレビ小説での『ひよっこ』や、テレ朝系が新しく設けた20分の「昼ドラ」枠での『やすらぎの郷』は大きな話題になりましたよね。特に朝ドラが若い人にウケているのは、15分という尺の短かさ。60分とか90分とか、テレビの前に座って集中できないって話はよく聞きますから。