『カルテット』『監獄のお姫さま』「視聴熱がすごい」とはどういうことか?
エスム どれだけ集中・熱中してドラマを観ているかを表す指標として、最近「視聴熱」とか「視聴質」という言葉が使われていますよね。例えば『ドクターX』は『水戸黄門』的に適度にハラハラしながらも、全部先が読めるくらいの安心感がある。だから視聴率がいい。数字に余裕ができるから、小ネタを挟んだり、どんどん面白いことができる。一方で最初からマスをターゲットにしていない作りのドラマは、一部の熱狂的なファンをつけるけど、得てして数字はあまり取れない。『カルテット』や『監獄のお姫さま』がそうだと思うんですが。
ササダン なるほど、SNSの盛り上がりなどを評価軸にする視聴熱ですか。
エスム はい。『カルテット』とか、私もものすごいハマって観てましたけど、ネットのニュースなんかで視聴率を知ると「え? あんなにツイッターで盛り上がってるのに」って思うことしばしばでしたもん。
スキマ ちょっとした時系列の矛盾にファンが気づいて、『カルテット』なんだからこれには意味があるに違いないってSNSですごい議論がされて、TBSが公式にコメントを出すみたいなこともありましたけど、それほどファンを釘付けにするドラマでした。というか、「ながら見」ができない、坂元裕二流の緻密な構成のドラマでしたから、自然と視聴熱を生み出す作品だった。
岡室 逆に言うと、エスムラルダさんが言う通りマス向けじゃない、お客さんを選ぶドラマだったんですよね。『監獄のお姫さま』も過去と現在と時間が交錯するじゃないですか。だから、1話目で「難しい、付いていけない」って脱落した人、多かったみたいです。
エスム その分『監獄のお姫さま』も視聴熱が高かったと思います。クドカン流の小ネタのぶっ込み方にみんなくすぐられて、反応せざるを得ない(笑)。第9話の「原宿駅から徒歩35分」っていうくだりも、SNSでは「どこだ、どこだ」って感じでみんなざわついて。
木皿泉、岡田恵和……「日常」を細やかに描く名作が続々と
岡室 『カルテット』をリアルタイムで観終わったら、すぐに感想をツイートしてたんです。そしたら、すぐに何百リツイートもされて驚いたんですけど、熱のある作品については、みんなすぐに感想を交わしたいんですよね。録画視聴が習慣化されている中で、SNSが視聴者をリアルタイム視聴に引き戻してるところはあるなって、実感しました。
スキマ 事前情報が何もなく、突然クドカンが『カルテット』に重要人物の役で出てきたときは「うわーっ」ってびっくりしました。
岡室 坂元裕二作品にクドカンですものね。この2人に加え『ひよっこ』の岡田惠和さん、『富士ファミリー2017』の木皿泉さんと、今年は「日常」を細やかに描くのが上手い脚本家がさらに名作を生んだ年だった気がします。