文春オンライン

2022/08/27

 緊張したまま、殺虫剤を噴射してしばらく放置すると羽音が静かになった。シャベルで少しずつ土を掘ると、動きが鈍くなったオオスズメバチたちがひしめいているのが見えた。そいつらごと巣を専用の袋に入れて、ひとまず巣の駆除作業は終わった。準備は数時間かかったのに、実際に巣を制圧するまでにかかった時間は約15分。あっという間の出来事だった。

 駆除したあとの巣は成虫が全滅している。巣の中をのぞくと、幼虫が働きバチにご飯をねだるカリカリという音が聞こえてきた。幼虫たちはまだ巣が侵略されていることに気づいていないようだった。

 今回は夜に巣を襲撃したので、お出かけ中の働きバチは少ないはずだが、それでも一定数の個体がしばらく巣の外で夜を明かす。彼らは「戻りバチ」と呼ばれ、朝になると巣があった近辺を飛び回るのだ。この戻りバチが非常に危ない。巣を失ったことで攻撃的になっており、威嚇なしで刺してくることもある。

 僕たちは、駆除を依頼されたお家には戻りバチについて毎回きちんと説明する。プロの業者が駆除したとしても戻りバチがゼロというのは不可能だろう。駆除したあとも、巣があった近辺では気をつけたほうがいい。

 巣を家に持ち帰ったあと、オオスズメバチの炒め物を作ることにした。巣の中にいる幼虫たちをピンセットでひとつずつつまんで、背に包丁を薄く入れて背ワタを抜いた。エビみたいに黒い背ワタが入っているのだ。面倒な作業だが、背ワタは雑味の塊なので美味しく食べるためには欠かせない。

※画像はイメージです。©iStock.com

 できあがった炒め物は、サイズは大きいけどアシナガバチの幼虫の味とそんなに変わらなかった。生で食べるとあまり味がなくて美味しいものではないが、炒めるとエビとピーナッツの中間のような風味が引き出されてクリーミーな味わいになる。ちなみに、殺虫剤を使わなければ虫を食べるペットのエサにもできるし、新鮮な幼虫は釣り餌にもなる。ハチの子は用途が多くておもしろい。

 防護服を着て、ポイズンリムーバーを持って、あらゆることに気をつけても、スズメバチは危ない。この本の中で「真似しないで」と何度も言っているが、スズメバチに関しては特に真似しないでほしい。

 ただ、僕個人の感想を言えば、作戦会議から巣を解体するまで、ゲームみたいな感覚があってずっと楽しかった。許されるなら、オオスズメバチの駆除を、クリスマスや正月と並んで毎年の恒例行事にしたいくらいだ。

 

※著者は安全性を確認の上、実施しています。真似をする場合は必ずご自身の責任で行ってください。

※“野食調理系YouTuber”ホモサピさんのYouTubeチャンネルはこちら

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