都心に暮らしながら、「野食」活動を続けている茸本朗(たけもと・あきら)さん。そのフィールドは都会から野山、海までと幅広く、これまで食べてきた野生生物の数も数えきれないほど。

 その中で「コレはヤバかった」と振り返る、茸本さん的TOP3を聞いてみた。マネしたくないが、面白い。野食ハンターが体を張って確かめた、究極の珍味をお届けしよう。(全3回の3回目/#1#2を読む)

野食家・茸本朗が選ぶ「食べたらヤバかった食材」とは?(画像:本人提供)

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「ベニテングタケ」は身体的被害がヤバい!

 実物を見たことがなくても、写真や絵本で見たことのあるキノコと言えば「赤地に白の水玉模様」ではないでしょうか。そのモチーフとなっているのは、ベニテングタケ。ベニテングタケは、世界的にも毒キノコの代表格です。コレのせいで「派手なキノコは毒がある」というイメージが定着したと言っても過言ではありません。実際は、必ずしもそうではないのですが。

ベニテングタケ(写真提供:茸本朗)

 ベニテングタケの毒はイボテン酸。食べれば悪寒、嘔吐など、消化器官に主な中毒症状が現れます。ところがこの毒が、うま味成分をたっぷり持っているので困ったもの。昆布のうま味として知られるグルタミン酸の10倍は強いと言われ「毒はあるがおいしい」「少量なら大丈夫」という困った情報が出回っています。僕も信頼のおけるキノコ仲間から「味も香りもトップクラスの人気を誇るタマゴタケよりも美味しい」と聞いたもので、つい実食を……。すると、強烈な発汗の後に、寒気、むかつき!

 確実に、中毒です。トイレを抱えてマーライオンになり、大変ヤバい状態となりました。

 試食したのは、仲間が食べていた黄色味の強いベニテングタケ(※ベニテングタケは色の変色が多い)。炭火焼とソテーにしましたが、舌がマヒしたかと思うほど強烈なうま味でしたね。

 さて皆さんにお伝えしたいのはベニテングタケの美味さではなく、野食材を食べて何らかの中毒が起きたときは「意識がはっきりしていれば、まずははき戻すこと」が定石であること。毒成分の多くは腸から吸収されるので、そこへ達する前に戻してしまうことで中毒を軽くすることができるからです。