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 土にはさまざまな細菌が含まれ、自然界最強の毒であるボツリヌス菌も警戒しなくてはいけません。加熱調理したあと時間を置かずに食べるなどの注意点はありますが、味や食感は余裕で食べられる!というものでした。食べられる土は販売もされていますので、実食したい方はぜひどうぞ。

流氷の妖精「クリオネ」のお味は…

 明らかに、食用の価値がないのに食べてしまったもの。それはクリオネ。日本海や北極海などの寒流の水域に棲息する、体長7〜8ミリほどの小さな生き物です。市場でペット用に売られていたんですよね。水族館用に卸されたが、余ってしまったとの話でした。ヒレを動かしてホバリングする姿は、しんどくなるレベルの可愛さ!

クリオネ(写真提供:茸本朗)

 しかし、クリオネのエサは非常に限られていて、近い仲間である遊泳性軟体動物であるミジンウキマイマイしか食べられません。つまり、関東の市場へ運ばれてきた時点で、餓死するまで待つしかない。不慣れな環境でジワジワ死なせてしまうよりは、ひと思いにという決断から食べることとなりました。

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 まずは刺身から。要は洗ってそのまま食べるということです。口に入れ、噛みしめると……シンナー臭い!

 歯触りはジャキジャキしていて、チアシードやスイートバジルシードのよう。しかしそれらも、シンナー臭さと苦みの前には台無しでした。お次はさっと湯通ししてポン酢につける方法。こちらの感想は、貝そのもの。刺身で食べたときのようなシンナー臭は大分弱まり、珍味と言える範疇ですね。しかしとにかく、全く食いでがありません。おそらく、100匹食べても満足できないでしょう。

 ちなみに、後に知人を中心にクリオネを食べるちょっとしたブームが発生しましたが、「シンナー臭さはなかった」と言う人もチラホラいました。個体差や、種間の差もありそうです。最近では、さまざまな地域のスーパーマーケットや市場で売られるようになっているようですが、有毒ではないので興味があれば試食してみてもいいでしょう。でも、間違いなく後悔するでしょう。いやほんと、食用にする理由が全くありませんので。

――怒涛のご体験をありがとうございました。ヤバいものを食べると、フォロワーや視聴者が減ることはありませんか?

茸本 意外にも、ありません。唯一そういったネガティブな反応が来るのは昆虫。自分の中で昆虫食は先が明るいジャンルだと思ってはいるのですが、とにかく皆、虫が嫌い。視聴者・読者がついてこないのがとても厳しいところですね。

 しかし日本は「一般的」とされる食材ばかりを選ぶ傾向があり、その結果特定の動植物に採取圧をかけすぎています。未利用魚などもそうですが、あまり利用されない生き物のおいしさを見出し、伝えていくのも解決するためのひとつの切り口であると思っているので、ヤバいものも、まだまだ食べていきたいです。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。