看守の気分しだいで殴られる
入ってくる人が増えると、部屋はすし詰めになり寒さは多少紛れるが、それでも耐えがたかった。
そして体は動かせないのに、シラミが体を伝って登ってくる。まさに生き地獄だ。
少しでも私語を交わしたら呼び出され、アルミのパイプで殴られた。
トイレに行くときは2人1組で手錠をかけられて連れて行かれるが、隣の人と会話をしないことには、うまく便器に向かって排泄することができない。それでも少ししゃべっただけで、利き手のほうを棒で叩かれた。
頭を腫れ上がるほど殴られた人もいた。看守が怪しいと思う動きをしても殴られたし、看守が気に入らないことはすべて殴る理由となった。すべては看守の気分しだいだった。
足は凍傷になり、凍りかけた飯を食べた体は震え
就寝時には毛布をもらえるが4~5人につき1枚しかもらえず、寒さのため満足に眠ることができなかった。
ただ、留置所に入った最初の日はぐっすり眠ることができた。いつ捕まるかわからず緊張で眠れなかった日々から解放されたからだ。
泥のように眠った僕は、翌朝、足の痛みで目が覚めた。寝ている間に凍傷になっていたのだ。凍傷になるような寒さを感じないほど、僕の体は睡眠を欲していたのだろう。凍傷になった足は電気が流れたようにしびれ、その後は思うように眠れない日々が続いた。
飯は、とうもろこしをくだいた100gにも満たないご飯と具のない味噌汁が出たが、自殺防止のため柄のないスプーンを渡された。飯は凍りかけていて、食べると1時間ほど体が震えた。1月に捕まり、その後に迎えた金正日の誕生日(2月16日)だけは白米が出た。
毎朝5時半に起床し、6時頃になるとひもを抜いたスリッパのような靴をはき、だだっ広い畑にある馬の餌を収める倉庫の裏に連れて行かれた。大便をするためだ。それが唯一、外出できる時間だった。
通常のトイレのときと同じく2人1組で手錠をかけられるが、容易に逃走できないよう、若者と年寄り(または体が不自由な人)で組ませられる。壁もないうえに男女の間は数mも離れていなかったが、正常な思考ができない環境で、異性の前だから恥ずかしいという感覚があったかどうかは覚えていない。