きょう8月10日、俳優の門脇麦が30歳の誕生日を迎えた。最近では、今年初めに放送されたフジテレビ系の月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』で、謎の女性・ライカを好演したのが記憶に新しい。ライカは場面によって人格が異なるというキャラクターである。原作コミックのファンのあいだには当初、門脇が演じることに賛否もあったが、ドラマが進むにつれ、彼女こそ適役と納得した人も少なくなかったようだ。
近年はこのほか、大河ドラマ『麒麟がくる』、映画『あのこは貴族』、配信映画『浅草キッド』など話題作にあいついで出演している。作品ごとにまったく違うキャラクターを見事に演じ分ける門脇の演技力はすでによく知られるところだ。昨年、演出家の熊林弘高が全キャストを1人2役にするなどして野田秀樹の戯曲に挑んだ舞台『パンドラの鐘』も、まさに彼女にふさわしい意欲作であった。
ファンの心をとらえ続けた「尖った役どころ」
筆者が初めて門脇を知ったのは、NHKの大河ドラマ『八重の桜』(2013年)である。同作で彼女が演じたのは、主人公・新島八重の姪・山本久栄で、徳富健次郎(のちの作家・徳冨蘆花)と激しい恋に落ち、駆け落ちしようとまでする。ドラマも終盤になってからの登場だったとはいえ、その存在感ある演技は強い印象を与えた。
その翌年には、映画『愛の渦』で、地味だがじつは性欲の強い女子大生を体当たりで演じて注目が高まり、多くの映画賞にも輝くことになる。その後も『止められるか、俺たちを』(2018年)で演じたピンク映画の助監督など、尖った役どころで映画ファンの心をとらえ続けた。
『止められるか~』公開時、20代後半に入っていた門脇は、ある記事で、30代に向かっていくなかでどんな作品に出たいかと問われ、「テレビドラマ」と答えていた。いわく《あの俳優が出てるから、普段あまり映画を観ないけど、観てみようかなって思ってもらえるのが、俳優の特権だと思っていて。その俳優を観たくて単館の映画館に初めて行ってみた、なんてことがあったらとても素敵だと思っています。テレビドラマをやりたい理由も、そういうことで》(※1)。