現在の彼女の私生活は、趣味を中心にかなり充実しているようだ。昨年2月、トーク番組に立て続けに出演した際には、釣りにハマっていると語り、意外と思わせた。場所はもっぱら海で、静岡に住む友人に会うため深夜バスで出かけ、午前2時に着いたので釣りをしていたこともあったという。釣りを通じて友達も大勢でき、なかには彼女が芸能人とは気づかなかった人もいたらしい。
もともと両親の影響で釣りや登山が好きだったが、芸能界に入ってからはストイックにならなくてはいけないと思い、休日も家に引きこもっていたという。だが、ここ数年でそれも改めて、積極的に外へ遊びに行くようになった。
ただ、釣りに関してはそれ自体が好きというよりは、自ら料理するためおいしい魚を釣るのが目的だという。料理にしても、自分で食べるよりも人に食べてもらうのが好きだとか(※7)。大河ドラマ『麒麟がくる』で制作統括を務めた落合将は、門脇の魅力を《何より「日常性」というのがすごく似合っていて、その中で説得力を持って迫ってくる存在感》と評したが(※8)、それも私生活によるところが大きいのかもしれない。
「エッジの効いた役」が集まるわけ
前出の『止められるか、俺たちを』で門脇をヒロインに起用した映画監督の白石和彌は、2018年の時点で、彼女の30代以後を展望して《門脇麦にオファーするということは代わりがいないということなので、必然的にエッジの効いた役が増えると思います。門脇麦の出演作を追っかけていれば日本映画の現在がわかる、そんな感じになっていそう》と語っていた(※1)。この予想はいまや的中しつつあるように思う。この10月には、大島優子やのんと共演した映画『天間荘の三姉妹』の公開も控える。
先述のとおり、かつての門脇は、常に目標を立てて突き進んでいた。しかし、本人に言わせると、明確な目標を持つのはいいことだとは思うものの、じつのところ自分には《性格的に、そういうのが向いていない。私の場合は、行き着く先がわからないからこそ、軽やかに波に乗って、流れに乗ったら、こんなところまで来てた、ぐらいのほうが性に合っているのだと思います》という(※6)。この言葉に、今後の流れしだいで、彼女が俳優としてさらに化けそうな予感を抱かされる。
※1 『キネマ旬報』2018年10月下旬号
※2 二階堂ふみ『アダルト 下――大人になった二階堂ふみがきいた話』(マガジンハウス、2016年)
※3 『週刊朝日』2021年3月5日号
※4 『AERA』2020年1月13日号
※5 『キネマ旬報』2016年7月上旬号
※6 『週刊朝日』2020年2月21日号
※7 『an・an』2021年2月17日号
※8 『文藝春秋』2020年10月号