9月27日と決まった安倍晋三元首相(享年67)の国葬が炎上している。
岸田文雄首相は「敬意と弔意を国全体として表す国の公式行事として開催する」と国葬の意義を主張するが、旧統一協会との関係や在任中の統計不正などに関する安倍氏への批判が吹き荒れ、Twitterでは「#国葬反対」が連日トレンド入りしている。
「文春オンライン」が実施した安倍元首相の国葬実施についての緊急アンケートでも「反対」が79.7%を占め、「賛成」の16.7%を大きく上回った。NHKの世論調査によれば、岸田政権に対する支持率も政権発足後最低の46%までに低下している。
しかし強い逆風の中でも、自民党内からは国葬に対する反対の声が一向に聞こえてこない。この国葬を望んでいるのは一体誰なのか、そして国葬が行われることで得をするのは誰なのか――。
安倍元首相の国葬に賛成する政治家たちの頭の中を、東京大学名誉教授で政治学者の御厨貴氏が解説する。
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国葬決定は「早すぎ」、2カ月は「長すぎ」
――安倍元首相の国葬について、アンケートでは79.7%の人が「反対」と答えました。まずは率直にこの数字についてどう思われましたか?
御厨 約8割というのはすごい結果ですね。ただ銃撃事件から国葬まで2カ月以上空くのが決まった時点で、反対意見が増えるのは予想していました。
事件直後は安倍さんという個人が亡くなったことを悲しむ人も多かったでしょうが、10日もすれば「安倍さんは国葬に値する人物なのか」と考える余裕が出てきます。もともと毀誉褒貶のある人ですから、賛否は当然分かれることになる。国葬決定はほぼ岸田さんの独断で「早すぎる」と感じましたが、亡くなった人の死をただ悲しんで待つには2カ月は「長すぎる」んです。
――なぜ2カ月も先の日程になったのでしょうか。
御厨 “外国の要人を呼びたい”ということに尽きるでしょう。岸田さんは安倍さんの下で4年半にわたって外務大臣を務めました。外交の重要性は人一倍感じていますから、安倍さんへの弔電が海外からたくさん来たのを見て「外交に使いたい」と思ったはずです。戦後唯一の前例となる吉田茂元首相の国葬は死去から11日後に行なわれましたが、それにならうと国外からの参列は見込めません。本当に「敬意と弔意を国全体として表す」ためだけなら2カ月も先にする必要はありませんから、まず外交的発想があったのは間違いありません。