1ページ目から読む
4/4ページ目

「国民は“損”をするかもしれません」

――それでは自民党的には、この国葬で“損”をする人は誰もいないということでしょうか。

御厨 だからこそ反対意見が出てこないんですよね。強いて言えば、税金が使われるということで国民は“損”をするかもしれません。それでも岸田さんとしては、とにかく国葬をやり終えてしまえば、この問題が尾を引くことはないと考えていると思います。問題山積だった東京オリンピックも、今となっては「やって良かった」と感じる人が少なくないのと同じことです。

岸田文雄首相 ©Getty Images

――国民の“忘れやすさ”を自民党は把握しているわけですね。

ADVERTISEMENT

御厨 2013年に安倍政権が特定秘密保護法を策定したときも、世論としては反対派の方が多い状況でした。しかし直前の参議院選挙で勝っていたのでそのまま押し、翌年の衆院選でも自民党は得票率を伸ばしている。一時的にマイナス評価を受けることがあっても、最終的に選挙で勝てればそれで良いという“選挙至上主義”的な傾向が、安倍さん以降の政権には強く見られます。

安倍晋三元首相 ©Getty Images

 岸田さんも同様に、国葬をやれば非難を浴びることは理解しているはずです。その上で、国葬後からの政治で点数を取り返して、次の選挙までに勝てる状態に持っていけば良いと思っている。しかも自分が衆院を解散しない限り、国政選挙は3年間ありません。そういう意味で今回の国葬問題は、岸田さんの受け継いだ“安倍イズム”が色濃く反映されていると言えるかもしれません。