近年、日本の株主総会の様相が変わりつつある。「アクティビスト」や「もの言う株主」などと呼ばれる、主に海外の投資ファンドの過度な要求に、日本企業が振り回されているのだ。投資ファンドは、配当増額や不採算事業の売却、経営陣の刷新などを突き付けることで、企業の経営に影響力を行使してきた。

 今年6月下旬の株主総会集中シーズンでも、各社の株主総会において、ESG(環境・社会・ガバナンス)を促進するような公益に資する提言もみられた一方で、アクティビストからはさらなる企業価値向上に向けての厳しい株主提案が飛び交う攻防が繰り広げられた。

 こうした光景は、かつて株主総会を舞台に、「総会屋」が企業に対して質問攻撃を重ねるなど跳梁跋扈し、対応に苦慮した経営者たちが右往左往していた姿と重なる。総会屋とは、暴力団や右翼団体などとともに反社会的勢力と定義づけられている存在で、株主総会の会場での乱闘騒ぎも辞さなかった。穏便に株主総会を終わらせたい企業は、彼らに違法な資金を提供することで、その見返りとして円滑な議事進行への協力を取り付ける対応をしていたものだ。

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 しかし、アクティビストは、総会屋とは違い、正攻法で企業に要求を突き付けてくる。そのため、日本企業は防戦一方なのが実態と言える。総会屋は現在ほぼ絶滅状況にあるが、アクティビストの登場によって、株主総会の現場には新たな地殻変動が起きていると言えるだろう。古今の株主総会の相違点について見ていきたい。(全3回の1回目/2回目3回目を読む)

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最もアクティビストとの関係が取り沙汰されている東芝

 企業の株式をある程度取得したアクティビストは、株主としての権利を行使し、積極的に投資先企業の経営陣に経営戦略を提言することで、企業の価値の向上を促すことを目的としている。株主提案権の行使、会社提案の否決に向けた委任状勧誘などを行うこともある。

 具体的には、役員報酬の引き下げ、役員の選任や解任、配当増額や低収益の事業の売却を要求することもあり、さまざまな形で企業経営に影響力を及ぼしているのだ。

 現在、日本で最もアクティビストとの関係がニュースとして取り沙汰されている企業が東芝だ。東芝は2015年4月に不正会計が発覚し、さらに2017年3月には米原子力発電子会社が経営破綻したことで債務超過に陥った。2017年8月に東証2部(当時)に降格すると、同年12月に6000億円の増資を海外約60の投資ファンドが引き受けたことから経営は迷走を始めた。

 今年6月に開催した株主総会では、米投資ファンド2社からそれぞれ1人ずつ計2人を社外取締役として選任し、新体制がスタートするかに見えた。しかし、投資ファンドの2人の選任に反対の立場を取った、弁護士で社外取締役の綿引万里子が辞任するといった混乱が続いている。

東芝の株主総会会場に向かう人たち ©共同通信社

 大手ゼネコンで長年にわたり株主総会の運営に携わってきた元総務担当者は、「日本企業のアクティビストへの対応は旧態依然としていて遅れている。低姿勢で総会屋に対応していた昔ながらの立ち回り方は、アクティビストには通用しない」と批判する。