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大きな社会問題となった「総会屋」と企業の関係

 元総務担当者がここで言う「総会屋」とは、昭和から平成の時代に主に活動していた反社会的勢力のことだ。企業の株式を取得して株主総会に乗り込み、長時間にわたり質問を繰り返した攻撃側と、質問攻撃する総会屋から企業を守る総会屋まで、立場はさまざまだった。攻撃型を「野党総会屋」と称し、防衛型を「与党総会屋」とも呼んでいた。双方ともに目的は企業から受け取る違法なカネだった。総会屋が企業の株式を買うことを、彼らは「株付け」と呼んでいた。

 これまでに、野村証券や第一勧業銀行(現・みずほ銀行)など日本を代表する金融機関や、三菱電機や三菱自動車など三菱グループ各社、伊勢丹(現・三越伊勢丹)、イトーヨーカ堂、味の素、高島屋などが、総会屋に違法な資金を提供していたとして、商法(現・会社法)違反の利益供与容疑で、東京地検特捜部や警視庁などが大規模な強制捜査に乗り出す事態となり大きな社会問題となった。

 最大時に40人以上のメンバーが活動していた国内最大の総会屋グループ「論談同友会」や、最後の大物総会屋と称された小川薫が率いた「小川グループ」など、多くの総会屋グループが活動していたほか、一匹狼のように単独で活動していた総会屋も多かった。論談同友会や小川グループからは数々の事件で多くの逮捕者が出ている(こうした相次ぐ事件の摘発や、法改正による規制強化で現在はほぼ活動実態はない)。

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アクティビストには正攻法しかない

「銀行、証券、三菱グループ」。当時、論談同友会の中堅幹部として活動していた元総会屋はバブル景気のころのスポンサーについて、このように表現していた。実態については、「銀行はカネが商売のタネ。いくらでもカネがある。銀行で受け取ったカネを証券会社に持って行き、膨らませてもらう。三菱グループは清濁併せ呑むところがあり、我々との付き合いは長い」と証言していた。

 アクティビストに対する企業の対応を批判した前出の元総務担当者は、「アクティビストにしても総会屋にしても、どちらも共通しているのは、目的はカネだということ」と指摘する一方で、「ただ、双方は大きく違う」とも強調する。

「かつての総会屋の場合は、株付けした企業に、株主の権利の行使と称して質問状を寄こすなどして株主権を行使する。その実態は、違法なカネの要求が目的だ。経営陣が気を使って様々な手で要求を取り下げてもらったりしていた。要求を取り下げてもらうにあたって、カネが必要なこともあった。そうでない場合は、土地取引やビジネスを持ち掛けるといったこともあった。要するに違法な利益供与だった」

 そのうえで、アクティビストの活動ぶり、企業の対応についてこう解説する。

「アクティビストの場合は、株主権を本当の意味で行使してくる。ここがまったく違う。『なるべく穏便に』などと袖の下は通用しないし、そのようなことでは収まらない。合法的な活動で、企業の経営効率化などを要求してくるため、正攻法で対処しなければならない。ただ日本企業はこうしたアクティビストの活動への対処ができていないのではないか」