総会屋対策で6月末に株主総会開催日を集中させる
今シーズンのもうひとつの大きな特徴は、「株主総会集中日」に開催した企業が過去最少の約600社となったことだ。かつては、多くの企業が、総会屋が複数の株主総会に出席することを妨害するために、6月末に株主総会開催日を集中させることが慣例となっていた。
過去の実態を振り返ると、1987~88年は集中日に1000〜1300社程度だったが、1989年には初めて1500社を超えて1503社となった。その後、1994年には2000社を突破し2010社、1997年は2351社が一斉に株主総会を開催して最多を記録した。
一般の株主から「一斉開催のために、複数の株主総会に出席できない。総会屋対策が優先され、株主を軽視している」といった批判や苦情の声が高まると、1998年は2325社と前年比でようやく減少傾向となる。2004年に1720社となり、2015年は1016社。2017年には3桁の707社で最多時のほぼ3分の1となりようやく正常化した。
「株主総会集中日」という用語は現在では当たり前のように使われているが、かつては総会屋対策のため各社の総務担当者たちが談合のように連絡を取り合って、一般株主を無視して企業の自己都合で決められていたのだった。
当時を知る、ある企業の元総務担当者は株主総会の裏側をこう述べた。
「集中させるだけでなく、社長ら経営陣から『株主総会はなるべく早く終わらせるようにしろ』と厳命が下っていた。株主総会でいろいろと質問されるのが嫌なのだろう。総会屋ばかりか株主によっては社長を呼び捨てにするだけでなく、社長に対して『おい、お前!』などと怒鳴りつけることもある。普段は社内でトップとして君臨しているだけに、こうした屈辱には耐えられない。だから株主総会は『短時間で終わらせろ』となる」
暴力団との関係を公然と名乗り、乱闘騒ぎ
総会屋とアクティビストの違いについて、元総務担当者たちが口を揃えて強調するのは、「暴力を振るうか、そうでないか」である。
かつての株主総会の場では、経営陣を質問攻めにする野党総会屋と、企業を守る立場の与党総会屋の間で、議事進行をめぐって乱闘騒ぎになることもあった。当時は、株主総会は企業の経営をめぐり意見を交わす場ではなく「暴力の場」となってしまったのだ。当然ながら非難の対象となった。
乱闘騒ぎが珍しくなかった背景には、多くの総会屋の暴力団との密接な関係があるとされていた。国内最大の総会屋グループだった「論談同友会」は関東最大の暴力団だった住吉会の有力2次団体と友好関係にあり、総会屋を自称していた児玉英三郎は国内最大組織の山口組の2次団体の幹部でもあると公然と名乗っていた。
総会屋への批判が高まるなか、違法な資金を提供していたとして、多くの企業幹部らが総会屋とともに逮捕された。イトーヨーカ堂(1992年)、キリンビール(1993年)、高島屋(1996年)、味の素(1997年)など大企業が摘発される事件が続発した。