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弁護人「解体について、あなたの調書ではかなり詳細に記載されていますが?」
耕太「取り調べの時にマネキンを持ってこられて、いま切断するとしたらどの順番でやるか、と言われて考えさせられました」
弁護人「解体の状況は覚えてる?」
耕太「正直申し上げると、ほとんど覚えていません。解体の時の話……いくつかの情景を記憶しています」
弁護人「それ以外はあまり覚えていない?」
耕太「申し訳ありません」
弁護人「謝ることじゃありませんよ」

 となれば、本人が覚えていないことを取り調べでは詳細に語っていることになるが、耕太はこれについて“捜査官が作り上げたストーリー”であるという主張を繰り広げた。

弁護人「あなたはAさんの胸や尻、髪や陰毛を切除していますね。これについて取り調べでは『要するに、私は妹が不特定多数の男と性交渉を持っていたことから汚いものを切除した』と言っていますが?」
耕太「僕の言ったことではありません。刑事に、推理といったようなことで、いまのようなお話を聞いた。その時、分からないけど泣いてしまいました。次の日までに、なぜ泣いたのかなと考えて、もしかしたら刑事の言う通りかもと思って、その刑事の話をそのまま話しました」
弁護人「動機は今も分からない?」
耕太「全く分かりません」

「妹と同じように悩みを抱える若者を助けたい」

 このように捜査官から誘導されて調書が出来上がったと耕太は繰り返す。彼はさらに、Aさんが心に悩みを抱えていたとも明かし「相談できる人がいれば、手首をチョンチョンと切らなかっただろうと思います」と独特の言い回しでAさんが生前行なっていたリストカットについて触れたうえ「これからは、妹のように、理解してもらえず苦しんでいる子供の手助けというのも思い上がりですが、そういったことできれば、世間様にお詫びとして受け取っていただけるのではないか、そういうふうにしていきたいけど、そういう感じでしょうか」と、“妹と同じように悩みを抱える若者を助けたい”などと語った。

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 落ち着いた様子で淡々と被告人質問に答える耕太は、事件の詳細については「分からない」「覚えていない」と繰り返す。彼の証言はどこまで信用できるのか。法廷で聞いていた限りでは、Aさんに対する悪感情を伴う行動については記憶が消えているが、ほぼ同時期の別の出来事は詳細に覚えている。記憶の消え方が出来過ぎているのではという疑念も若干抱いた。