「天狗の像の目が赤く光ると帰れなくなる」
自宅で妻を殺害した田中容疑者はなぜ子供の遺体を、自宅から10キロ以上も離れた入鹿池の近くに遺棄したのか。心霊スポットと言われる事件現場を歩いた。
外周16キロの入鹿池は岐阜県寄りにあり、森林に囲まれている。夏はキャンプ場として賑わい、秋には紅葉、冬はワカサギ釣りの行楽客が行き交う観光地だ。近隣の小学校が遠足としても利用している。
入鹿池は寛永10年(1633)に、尾張藩主の徳川義直の重農政策による新田開発の水源として築造されたため池で、2016年11月には天皇皇后両陛下(当時)も視察している。
しかし、夜になると、その景色は一変するという。70年以上、入鹿池近くに住む住人が「また、この周辺で事件が起きてしまった……」と困惑した表情で現地の事情を語る。
「このあたりは数軒の民家しかなく、夜になると人通りはまったくありません。信号のない急カーブがいくつもあり、事故も多い。あまりに頻発するので、『事故が起きるのは“ぴょんぴょん婆”というお化けが出没して、猛スピードで車を追走するからだ』と実しやかに言われるようになったんです。
他にも、近くの天狗神社では、『天狗の像の目が赤く光ると帰れなくなる』という噂が出たり、『池の中で悲しげにトランペットを演奏する“トランペット小僧”を目撃した』という話もあるほどです。こうした心霊現象が語り継がれ、入鹿池周辺はいつしか心霊スポットとなってしまいました」
入鹿池周辺で、多くの不審死や事故死が頻発
夜は地元の住人でさえも近寄るのを躊躇う場所と言われる「入鹿池」。実際に多くの不審死や事故死が頻発している。主な事例だけでも次のような事件・事故がある。
・1992年7月 入鹿池近くの道路でマイクロバスと乗用車が衝突して22人が重軽傷を負った事故が発生。
・1999年3月 ブラックバス釣りに来ていた地元大学生のボートが転覆し、後日、水死体で発見。
・2003年6月 ボートで釣りをしている男性が、水死体となって沈んでいる男性を発見。
・2008年1月 入鹿池近くの駐車場に止められた車の中から一酸化炭素中毒で亡くなっている男性が発見される保険金殺人事件が発生。
・2010年7月 入鹿池に男性の遺体が浮いているのを通行中の女性が通報。
・2012年9月 女性の遺体が入鹿池にうつ伏せで浮かんでいるのを貸しボート店主が発見。
いずれも不可解な事件・事故だが、前出の住人はこう語る。
「報じられている以外にも多くの事故死が起きています。20年以上も前、貸しボートを営む店主が朝、池に浮かんでいる無人のボートを発見すると、その真下から若者が遺体として見つかった事件がありました。若者は前日の夜中に無断でボートを使用して、何かが起こったのだと言われました」
自殺も試みたという田中容疑者は、心霊スポット周辺での数日間をどのような思いで過ごしたのか。
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