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いまのバファローズはブレーブスに似ている…パンチ佐藤が感じる中嶋監督の凄み

文春野球コラム ペナントレース2022

2022/08/30
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「サメ、ホームラン狙え!」から始まった逆転劇

 中嶋がね、上田監督に「ホームラン打て!」って言われて本当にホームランを打った時があったんです。辻、秋山、デストラーデがいた頃の西武を相手にサヨナラ勝ちした試合ですよ。

 あの頃の西武を相手に、9回4点差ですよ? ワンナウトから上田さんが「サメ、ホームラン狙え!」って言ったんですよ。「え?」って(笑)。小学校から野球やってきて「ホームラン打て」なんて言う監督、初めてでした。

 そしたら中嶋、打ったんですよ。

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 4点差が3点差になり、「こりゃいけるぞ」ってなって。で、フォアボール、ヒットで一、三塁。松永さんが敬遠で満塁になって、僕が

「佐藤! 何でもいいから塁に出ろ!」

 って言われてセンター前ヒット。

 で、門田さんがドーン!と満塁ホームランでした。

 打力でねじ伏せる野球もありながら、投手王国でもある。守る人はきっちり守る。それがブレーブスの野球なんですよ。

中嶋監督と山岡泰輔

中嶋監督の中にある上田イズム

 ベテランであろうが誰であろうが、みんなに平等にミスしたら大きな声で怒鳴るし、叱る人。

 そんな上田監督が怒らなかったのが、門田さんともう1人、中嶋だったんです。

 中嶋が入る前、チームには藤田(浩雅)さんという、新人王も獲ったことがあるキャッチャーがいました。ですが、中嶋が入ってから上田監督はどんなにミスしても、打てなくても中嶋を使い続けたんです。

 中嶋も監督になった時、二軍監督からというのもあったんでしょうけど、腹をくくってやりたいようにやる、使いたい選手を使う、と思っているように見えました。

 ああ、上田監督が「中嶋と言ったら中嶋なんだ」って言っていたのと似ているな、って思いましたよ。中嶋もそれで育ててもらっているんですからね。

 だから、杉本もそう。ショートの紅林にしても、センターの福田にしてもそう。「これと言ったらこれ」と開き直って使い続けられる。

 そういうところに、上田イズムみたいなものがあるんです。

 中嶋は怒鳴ったりしないし、ああいう顔だから怒っているんだか笑っているんだかもよく分からないけど(笑)、胆が据わっているのよ。

今のオリックス・バファローズはブレーブスに似ている

 今のオリックスも、チームに地力はあります。

 山本由伸がノーヒットノーランをやって、他のピッチャー陣も刺激を受けて頑張っている。打つ人は打つ、守る人は守る、死に役の人は死に役、と自分の役割を全うできている。

 チーム名はバファローズだし、ユニホームも変わっちゃったけど、今はチームの雰囲気がブレーブスに似ている。交流戦のイベントでベンチのムードを感じて、そう思いましたね。

 自分は野球はすっぱり辞めて、現役時代のグローブやユニホームも屋根裏にしまったっきりです。そんな自分が今のオリックス・バファローズを見てみたいと思うようになったのは、中嶋に上田監督のイズムを、チームにブレーブスに似た雰囲気を感じられたからなんだと思います。

 中嶋がいつまで監督をやるかは分からないけど、応援したいですね。

 DYNAMITE!

◆ ◆ ◆

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