ここ2年で存在感を増してきた「パパ活」関連の事件
2020年1月、49歳の男が“パパ活”に応じた女性に乱暴したとして警視庁に逮捕されました。「パパ活少女に睡眠薬飲ませ乱暴」などの見出しで多くのメディアが取り上げましたので、ご記憶の方もいらっしゃると思います。
「パパ活」とは、食事などに付き合う対価として男性が女性に金銭を支払うのが一般的ですが、性行為を前提にしているものも多数あります。〈優しいパパ募集中。18歳、画像あり! 少しだけ助けてください〉などとツイッターに書き込み、連絡してきた男性と交渉するわけです。男性の側から〈都内ホテルでお会いできる方いませんか。希望額お願いします。こちら30歳〉と書き込む場合もあります。
パパ活という言葉は2017年頃から耳にするようになりましたが、ここ2年で存在感を増してきた印象があります。コロナ禍で仕事を失った水商売の女性や、アルバイト収入をなくした学生が、当座を凌ぐために「パパ活」に手を染め出したことは想像に難くありません。
この事件で逮捕された男は、パパ活女性とツイッターでやりとりする際、性行為をしない約束をしてホテルなどに誘い出していました。しかし現実には、睡眠薬を飲ませて意識を失わせてレイプし、その様子をスマホで撮影していたといいます。東京や埼玉などで、2年前から50人以上に犯行を繰り返していたということです。「タダで性行為がしたかった」と供述しているとも報道されていました。
これは絵に描いたような睡眠薬レイプ事件です。小遣い稼ぎのつもりでパパ活を望む女性たちは簡単に罠に嵌ってしまう。犯人は言葉巧みに誘導して睡眠薬入り飲料を飲ませ、レイプや強盗に及ぶ。被害に遭った女性は後ろめたさから誰にも相談できないわけです。
「ツイッターはかかりがいい」
2017年10月に発覚した神奈川県座間市の男女9人連続殺害事件は世の中に大きな衝撃を与えました。犯人である白石隆浩(当時27歳)の自宅から発見されたのは、若い女性8人・男性1人の計9人(当時15~26歳)の切断遺体。その後、白石は9人に対する強盗、強制性交、殺人などの罪で起訴され、死刑判決が確定しましたが、この事件でも一部の被害者に睡眠薬が使われています。
犯人はツイッターで自殺願望者に言葉巧みに接近し、自室に連れ込むと、薬物で昏睡させて襲い、ロープで首を絞めて殺害しました。病院で「眠れない」などと訴えて睡眠薬の処方を受けたと供述したとのことです。この犯罪史上、稀に見る連続猟奇殺人事件の犯人は次のように語ります。2019年10月29日付東京新聞(TOKYO Web)の〈「心弱っている子狙った」 座間9人殺害2年 白石被告、面会応じる〉という記事の一部を紹介しましょう。
〈会員制交流サイト(SNS)に自殺願望を書き込んだ若者を狙った理由を「金と欲のためにやった。心が弱っている子を狙った方が楽だと思った」と明かした。(中略)「ツイッターはかかりがいい」。立川拘置所(東京都立川市)で面会した白石被告は、そう話した。女性を風俗店に紹介する仕事をしていた経験から、「悩みを抱えている人は簡単に口説けた。だから『さみしい』『つらい』とかつぶやいている人に片っ端からメッセージを送った」と、悪びれずに振り返った〉
〈ツイッターはかかりがいい〉。この文句には寒気を覚えます。でも、これは事実です。「ツイッターは騙しやすいし、騙されやすい」。違法薬物の密売人も、白石と同様のことを考えています。本来、治療のために用いられるはずの睡眠薬が、殺人やレイプのツールとされ、人と人との繋がりを促進しコミュニケーションの活性化を図る目的で開発されたSNSが、人を陥れるための道具とされている。それも狙われるのは社会経験に乏しく、警戒心が薄い未成年や、心の弱った若い女性たちです。実に理不尽な話です。
こうした事態が現在進行形であることを、読者の皆さんにはぜひ知ってもらいたいと思います。重要なのは、子どもたちが薬物を乱用しないこと、次に、密輸や密売の片棒を担がされないこと。そして、“絶対に薬物を飲まされない”ことです。こうした意識を子どもたちにして頂けることを願っています。