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パパ活やマッチングアプリで横行する“睡眠薬レイプ事件”の恐るべき実態「狙われるのは警戒心が薄い未成年や心の弱った若い女性」

『スマホで薬物を買う子どもたち』より #1

2022/08/25
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SNSで騙されないための注意点

 かねてより、ネットの規制強化や、睡眠薬処方の厳格化といった意見はあります。前者については、日本インターネットプロバイダー協会が安全対策への取り組みを強め、ネットを監視する機関・団体も増えています。捜査機関がサイバーパトロールを徹底し、違法情報や有害情報に対する取り締まりを強化しているのも事実です。SNS上の誹謗中傷についても国が対策強化に乗りだしました。「ネットリテラシー(インターネットを適切に使用するための知識や能力)」という言葉も頻繁に耳にしますし、多くの人がネット上の問題を現実的な課題と捉えるようになってきました。

 しかし、ネット上の情報量が膨大過ぎること、匿名性が高いこと、情報の更新が速すぎること、ネット空間に国境がないことなどの要因から、犯罪抑止という面で有効な解決策は見出せていません。

 後者の睡眠薬については、厚生労働省がより厳格な対策を講じ、従来のように1回の処方で数種類の睡眠薬や精神安定剤が出されることは明確に減ってきました。しかし、“ドクターショッピング(クリニックをいくつも回ること)”を繰り返す者や、処方箋を偽造して調剤薬局から薬物を入手しようとする輩は後を絶ちませんし、ネットではいまだに多種類の薬物が密売されています。ここでは「ネットと睡眠薬、いま起きている現実とどう向き合うか」という点について考えてみたいと思います。

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「SNSで騙されないようにする」。これを突き詰めれば結局は、ネットリテラシー問題に辿り着きます。ネットリテラシーが低ければ次のような結果を招きます。

 ・情報を信用し過ぎてしまう。

 ・自分の個人情報を無意識のうちに晒してしまう。

 ・他人の情報を勝手に使ってしまう。

 ・危険な無料ソフトやアプリを安易にダウンロードしてしまう。

 ・SNSで事件・事故に巻き込まれてしまう。

 学校現場ではネットリテラシー教育も進んでいると聞いていますが、同時に親御さんがこれを理解し危機感を持つことが必要不可欠でしょう。その上で、SNSや出会い系サイトで騙されないようにするにはどうすればいいのか、少し噛み砕いて説明してみたいと思います。

 ・交信相手が誰なのか分からないことを理解する(相手が犯罪者であること、女性を装っていることは十分にあり得ます)。

 ・若い女性のみならず男の子を狙っている場合も多い。

 ・相手がほめる、おだてる、理解を示すのは、安心感を与える常套手段。

 ・写真を送るよう求めるのは品定めのため。

 ・テレグラムなどの秘匿アプリに誘導するのは下心がある証拠。

 つまり、常に罠が張り巡らされている、と考えるべきなのです。実際、「自分は大丈夫だ」と思っていても、事件に巻き込まれる可能性は十分にあります。自分の身上は極力語らず、写真は送らず、交信記録は残す。可能なら直接会うことは避けるべきでしょう。会う必要があるのかどうか、リスクも含めて冷静に考えてみる。家族や友人に相談してみる。

 それでも会うのなら、場所と時間はこちらで指定する。「お会いするなら良いお店があります。家族や友達と良く行くお店です。ここでお願いします」と伝え、こちらで決める。それに難色を示す相手ならそもそも会うべきではありません。

 また、相手の氏名・年齢・住所・職業・携帯番号は必ず聞き取る。携帯に折り返しかけてみて録音する。会うにしても夜は避け、相手の自宅やホテルには絶対に行かない。可能なら複数人で行く。そして、家族や友人に「いつ、どこで、誰と会う」ということを必ず伝えておく。これを徹底することが最低限の保険になると思います。

 その上で、見ず知らずの人とは飲食を共にしない。とくにSNSなどで知り合っただけの男とは絶対に飲食しない。飲食せざるを得なくなった場合は人目の多いカフェやレストランを選ぶ。大事なのは絶対にアルコールを飲まないこと。相手が持参した飲料を口にするなど以ての外です。飲食店では自分で注文したもの以外は絶対に口にせず、席を立つときはコップの中身を飲み干していく。それができないときは、席に戻っても飲みかけ食べかけの物は一切口にしない。

 屋外で会うときは、ペットボトルを持参し肌身離さず持っている。最近の睡眠薬には悪用防止のため、水に溶かした場合に色調が変化するように着色剤を添加したものもありますし、水に溶けにくい錠剤も登場しましたが、まだまだ一部です。自分の見ていないところまで、きちんと意識することが重要です。

パパ活やマッチングアプリで横行する“睡眠薬レイプ事件”の恐るべき実態「狙われるのは警戒心が薄い未成年や心の弱った若い女性」

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