国税職員を含む男女グループが新型コロナウイルスの持続化給付金を搾取した事件で、8月23日、関与した佐藤凜果被告(22)の初公判が東京地裁で行われた。罪状を認めた上で、詐欺に加担した動機を「老後に不安があった」と説明した。

 これからについて「今後は貯蓄や『つみたてNISA』などを利用してコツコツためていきます」として、反省の弁を述べた佐藤被告。総額2億円にも上る国税職員も関わった大規模詐欺事件について「週刊文春」の特集記事を公開する(全2回の1回目/#2 〈初公判〉パシリになった24歳国税職員、不動産美人OL、元ヤン日体大生…2億給付金「男女7人詐欺物語」へ続く・肩書き年齢などは掲載当時のまま)。

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 相次ぐコロナ給付金の詐取事件。国税職員も加わった男女グループは得意分野ごとに役割分担し、無知な若者を食い物に。さらに主犯は9億詐取の“三重一家”同様、海外に高飛び――。罪悪感なき詐欺師たちの素顔を暴く。

 新潟県見附市に住む一家は、約4年前に上京し、都会で暮らす娘の身を常に案じてきた。東京・国分寺市の不動産会社で働く佐藤凜果(22)が持続化給付金をめぐり、警視庁に詐欺容疑で逮捕されたことがわかったのは6月2日。その2日後、彼女の父はこう言葉を絞り出した。

佐藤凜果容疑者(会社HPより。現在は削除)

「普通の子としか言いようがない。寝耳に水というか……馬鹿だな。怒りと驚きで心がいっぱいです」

 さらに佐藤と同時に逮捕されたのは、東京国税局職員の塚本晃平(24)だった。

東京国税局職員の塚本晃平容疑者

「2日までに逮捕された犯行グループの主要メンバーは計7人。高校生や大学生に『暗号資産に投資すれば個人事業主になれるので給付金が申請できる。犯罪にはならない』と虚偽の説明をし、不正受給をさせた疑いです。約200人の名義で受給し、被害総額は2億円ほどに上る」(社会部記者)

 その後の捜査によって炙り出されたのは“成功”や“富”といった空虚な言葉の磁力によって繋がった、男女7人の人間模様だった。

将来の夢は「警察官」だった

 97年、熊本市内に生まれた塚本は幼い頃にサッカーに明け暮れ、卒業文集には地元のJクラブ・ロアッソ熊本に入団する夢を綴った。そんな塚本には唯一無二の相棒がいる。同じ小中学校に通っていた中村上総(24)だ。2人を知る同級生が当時を振り返る。