「見ず知らずの人にウサ耳を投げつけられた」
うぬ そうですね。顔をキャンバスだと思って描いています。均一に色を塗るとか、線をきれいにまっすぐ描くとか。アートだなって思いますね。
私はもともとイラストを描くのが好きで、大学は4浪して東京藝大に入って、卒業後はデザイナーになりました。私生活でも、何でも自分でデザインすることが好きなんです。メイクにしろ、洋服にしろ、常に自分の好きなことをしていたくて。
――うぬさんは「ヤマンバメイク」に目覚める前も、個性的なファッションや派手なメイクが好きだったのでしょうか。
うぬ 最初は目立つことに抵抗ありました。そもそも子どもの頃から外見だけではなく、中身の問題で目立つことも多かったんですよ。コミュニケーションが苦手で、人が傷つくようなことを平気で言ってしまったりして。
だからといって、「目立ちたい」という気持ちがあるわけではないんですけど、どこに行っても「変な子」っていうレッテルを貼られて目立ってしまうというか。それプラス外見も派手なので、さらに「変な子」だと思われていたでしょうね。
ロリータファッションをしていたころ
――ロリータファッションをしていた時期もあったんですよね。
うぬ ありました。藝大に入学する少し前だったと思うんですけど、憧れていたイラストレーターさんがロリータブランドのDMイラストを描いていたんです。自分も着てみたくて、洋服を買ったんですけど、外に行く勇気がなかなか出なくて。母に「これどうかな?」って聞いたら、「ダメじゃない」って言われたので、この格好で外に出ることは諦めていたんですけど、友達が「え、別にいいじゃん」って言ってくれて。それで吹っ切れて、外に出られるようになりました。
でも、外に出ると、やっぱりたくさんの心ない視線を受けました。目立つので後ろから何か言われたり、勝手に写真を撮られたり。「頭おかしいんじゃない」とか「気持ち悪」って野次を飛ばされたりもしました。
それこそ私、頭にウサ耳つけて歩いていたんですけど、いきなり見ず知らずの人からそのウサ耳を外されて投げられたこともありましたね。すごく怖かったです。でも、良くないことなんですけど、だんだんとそういう偏見にも慣れてくるんですよね。
――見た目が派手なだけで、たくさんの怖い思いをされてきたんですね。
うぬ 昔、ロリータファッションをして一人で歩いていた時に、男の人から「お姉ちゃんいくら?」って聞かれたこともありました。2人っきりのエレベーターの中で言われたので、すごく怖かったです。自分の好きな格好をしているだけですけど、見る人から見たらそういうイメージを持たれてしまうんだなって。でも、だからといって、自分にとって好きな見た目をしないという選択肢は私の中になかったですね。
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