あとは、いきなり1人で全てやらなければいけないプレッシャーや申し訳なさ、「本当に自分でいいのかな」という不安もあって。フィンランドに移住する前に勤めていた会社では、10年間で2回しかオフィスで泣いたことがなかったのに、レストランではもう3回も泣きました。
オープン前に泣きながらお寿司を巻くみたいな時期もあったんですが、今はもう慣れて「どんとこい」って感じで働けています。カオスの1カ月目があったおかげなので、今では感謝しているんですけど、やっぱり大変でしたね。
――メニューはやっぱり日本と違うのでしょうか。
chika そうですね。学校で習った20種類の中には入っていなかった、小ザメみたいな見た目の魚をさばけって言われたときは、どうしたらいいかわかりませんでした。
ただ、ハーブを使ったお寿司など、フィンランドで進化したメニューを教えていただくのはすごく面白いですね。日本のお寿司をフィンランドで作るだけではなくて、北欧らしいお寿司を知りたいし作りたいと思っていたので。
お客さんが「美味しかった。あなたがフィンランドで寿司シェフになってくれて嬉しい。来てくれてありがとう」って言ってくれたときは、すごく嬉しかったです。ずっと「フィンランドに来たい」と思っていた気持ちが、その言葉によって実った気がして。
それから、「サインください」って言われることもあって、寿司職人としてリスペクトしてもらえる環境に驚きました。
――素敵です。お客さんからいろいろ言葉をかけてもらえるんですね。
chika 私のボスに対してお客さんが「あなたはこのキッチンにダイバーシティを作ったんですね」と話されていたのも印象的でした。女性もいて、国際色豊かなキッチンという意味で。その1つになれたのが、とても嬉しかったです。
まだ1回も給料をもらえていない?
――念願のフィンランドでの生活はどうですか。大変なことなどはありませんか。
chika 実は、もう4カ月働いているんですけど、まだ1回も給料をもらえていないんです。
――え!? 4カ月で1回も?