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竹内まりや「シングル・アゲイン」はなぜ“厄介”か

 前述したポルノグラフィティの「スロウ・ザ・コイン」も、「元カノが結婚した」という風の便りを受け取った複雑な心境を描いている。確かに心ざわつくケースだが、これはまだいい。相手がもう結婚しちゃってるので、諦めのつけようはある。

「スロウ・ザ・コイン」

 厄介なのはこの逆で、他に相手ができていたはずの元恋人が、また独りに戻ったというケースである。

 竹内まりやの歌う「シングル・アゲイン」(1989年)はまさにこれ。「独りに返った」という風の便りがきっかけで、ひどい別れをした恋の記憶が甦るのだ。忘れかけていたのに!

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 風の便りで心がざわめくほど気にはなっているのだが、そもそも「独りに返った」という情報は人づて。本当なのか確かめるには、相手からの電話を待つしか手段がない。このあたり、ネットがない時代のもどかしさもある。連絡さえ取れれば、「ざまあみろ」くらい言えるところなのだが、未練を中途半端に抱いたまま宙ぶらりんである。これが困る! 主人公は「本当のさよなら」ができるまで、きっと時間がかかりそうだ。

竹内まりや

 このように、風の便りはボンヤリな情報だけに、想像と不安が無駄に膨らむばかり。「どうにかしたいのに決着つけにくい」切なさが胸に痛い! だからこそドラマチックなのだが、「ドラマチック」と「厄介」は紙一重なのである。「シングル・アゲイン」の余韻はアゲインが止まらず永遠状態。ハートがもたないよ竹内まりや!

 恋の未練と「風の便り」は最高に相性がいいが、きっと現実生活でこのコンボにハマるとひたすら地獄。気をつけたいところだ。