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竹内まりやの名作失恋ソング「シングル・アゲイン」はなぜ“厄介で地獄”なのか 未練を匂わせた日本の恋歌の“共通点”

J-POPから見るニッポン

2022/08/30

 長引くコロナ禍をはじめ、辛いニュースが多い昨今。SNSとの距離感を測りかねている人も多いのではなかろうか。フェイスブックやツイッターで流れてくる、いろんな人が発信するいろんなニュースとそのリツイート。私も外に出る機会が減った分、つい流れてくる情報に依存しがちである。救われたり落ち込んだり、そのアップダウンはジェットコースターの如しだ。

友達のまたその友達のツイート=風の便り

 そんなとき、偶然聴いたポルノグラフィティの「スロウ・ザ・コイン」(2014年)という歌に、こんな歌詞があった。

「友達のまたその友達の ツイートが 届ける 風の便り 知りたいか知りたくないか 問われりゃ なんだか微妙なところ」

 なるほど……! SNSを「風の便り」と表現するとはさすがロマンチック・跳ねワードの匠。電波に乗って続々と流れてくる風の便り(情報)は、特に知りたくない内容も多い。ただでさえウワサは「光の速さより速いよ」(沖田浩之「E気持」)と歌われるほどの伝達速度。それに情報量や拡散範囲までプラスした現代、巻き込まれ大事故にならないよう、上手に振り分けて読みたいところである。

写真はイメージ ©iStock.com

 ということで、「風の便り」の今と昔を追ってみた。

恋愛ソングと未練の相性が良すぎる

 風の便りの意味は「誰が言い出したかよく分からないほど、遠く遠くから伝わってきた不明瞭な情報」である。ものすごくザックリ言えば「また聞きのまた聞き」なのだが、なんと情緒豊かな言い回しなのだろう。言葉自体は古くからあり、遡れば平安時代の「古今和歌集」や「源氏物語」にも登場するという。平安時代、エモい! ちなみに「風の便り」と同じ意味で「風のうわさ」という言葉もある。「噂」はそもそも「風が伝えてくる話」という意味があるので、重言になるという説もあるが、歌謡曲では大人気だ。これはこれで、ウワサ話の「ふんわり感」が漂い、捨てがたい。

 風の便り(または「風のうわさ」)で一番ハッピーなのは、アリスが歌う「ジョニーの子守唄」(1978年)のパターン。憧れのスターや、昔何かしら生きる力をくれた人が、何十年もの時を経て「今も燃えている(元気)」と知る。これは嬉しい。

 しかし残念ながら「風の便り」は未練と滅法相性が良く、恋愛ソングの歌詞では、結構セツナイ。恋心をぶり返すきっかけとして顔を出すのだ。

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