「あの研修は人の心を失わせる」
「A氏は『これは学院の意向だ』と繰り返していました。研修は1日8時間で5日間。皆の前で人格を否定され続け、本当に辛かった。風邪のためマスクをしたまま発言した人が15分以上叱責されたあげく、『年齢相応の存在感がまったくない』とまで言われた。あの研修は人の心を失わせる。受講者の多くが研修後に心療内科を受診している。今も突然、研修がフラッシュバックすることもあります」
今年6月23日、朝日新聞がこの研修について報じると、学院は、川原俊明理事長名でHPに声明を掲出。管理監督責任があった理事を厳重注意し、理事が報酬月額の10%を6カ月、自主返上するとした。しかしその声明はあくまで「研修を委託した本学院」としての責任を感じる、とのスタンスに留まっていた。
だが取材の結果浮かび上がってきたのは、「委託元の責任」に留まらない、激しい研修内容を主導する学院首脳部の姿勢だった。
研修の実施は16年6月の常任理事会で決定された。学院内の稟議書に記されているその目的は「自律的キャリア形成の支援」。
「自律的キャリア形成」の意味するところは何か。
「A氏は『この研修の成果は、退職を受け入れるか、専任職員から、子会社への転籍や特定事務職員への職種変更(一旦年度末で退職)をすること』と繰り返していました。
実際、7名の職員が、研修直後に渡された『進路選択に関する申請書』に、退職もしくは職種変更などと記入せざるを得なかったのです」(前出・学院関係者)
同学院が研修の“成果”に期待していたことは、あらかじめブ社に厳しく発破をかけていたことでわかる。
研修の半年前、学院は中高管理職員10名を対象に、同じくA氏を講師に招いて「当事者意識確立研修」を行っていた。やはり受講者を追い詰める内容だったが、研修を参観した学院理事は、ブ社の今井社長にこんなメールを送った。
〈最も特徴的だとされています、(ブ社の)「圧迫的な手法」も、「子供騙し」程度でした〉
〈「目的」達成度が不十分であるのなら、今回の費用を返却してもらうか、次回の研修は無料としてほしいと、私の感覚では、そのように言わざるを得ません〉
そして、このメールを受けた今井社長は、
〈頂戴した感想を踏まえ、弊社なりに検証を行い、あらためてご報告をさせていただきたいと存じます。(中略)既にご請求させていただいた請求書は、一旦破棄頂きますようお願い申し上げます〉
と返信。
「理事のメールにある『目的』とは、明らかに退職を示しています。『圧迫的な手法』を強めるよう示唆したのは、次回の研修で『より成果を出して欲しい』という思いがあったのでしょう」(同前)