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「彼女は嫉妬心、出世欲が強い。自分の血筋を笠に着て部下を怒鳴り散らすこともありました。そうした一面を見ていたから、人生の伴侶にしようという考えは湧いてこなかった。冷徹で好戦的。それが崔氏の本質ですよ」
そうした猛女ぶりは、対米交渉の場面でも片鱗をのぞかせていた。
「2003年から2007年に行われた北の核開発問題について、米国、韓国など6カ国で協議する『六者会合』では、外務相ら自身の上司を差し置いて持論を打っていました。米国の担当官から度が過ぎたスタンドプレーに対してクレームを付けられるほどでした」
文在寅前大統領を「低能」「鉄面皮」と痛烈に罵倒
北の外交を語る上で外せない女がもう一人いる。前述した金与正だ。
2010年9月、金正恩は父・正日の健康悪化に伴い、朝鮮労働党代表の会議で、正式な後継者として権力を引き継いだ。時期を同じくして、兄に寄り添う与正の姿が捉えられ、その動向が各国メディアで伝えられるようになった。
2016年5月には、党大会で、中央委員会委員に選出されて政治の表舞台に登場。その後も米国や韓国との交渉の場にたびたび現れ、2021年3月、党宣伝扇動部副部長の肩書きで発表した談話でその存在を世界に誇示した。
国営メディアなどを検閲、統括する役目を担うこのポストは、かつて父・正日も務めた強い権限を有する要職だ。与正は、北の弾道ミサイル発射に関連するこの談話で、韓国・文在寅大統領を「低能」「鉄面皮」と痛烈に罵倒。自身に流れる酷薄な独裁者の血脈を強烈に印象づけた。
「与正が男だったら、彼女が指導者になっただろう」
金氏は、この言葉を「高位脱北者」の同志で、韓国で再会した黄長燁(ファン・ジャンヨプ※故人)元国際担当書記から聞いている。