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川村 Yaffleさんの作られたものは、最初から素晴らしかったです。ミックスの段階で細かい調整はしていただきましたが。特に映画のエンディングに流れる「Hello, I am KOE(Ending)」は素晴らしくて。ピアノとストリングスのシンプルなサウンドで構成されたアレンジを聴いた時、KOEというアーティストに人間性が生まれたような気がしました。それが「いろんなものを引かれた時に何が残るのか?」という、映画を通じて最後に伝えたかったことに通じると思ったので、エンディングとして使用させていただきました。

100あるものをゼロにすることは簡単

――KOEの「声」も印象的でした。機械的でありながらも、不思議な温かみがあって。

川村 個人的には大貫妙子さんの声を聴いた時と同じ感覚がありました。感情を声にのせていないように聞こえるのですが、とてもエモーショナルでもあるという。KOEは、歌詞の意味を理解している訳ではないのに、聴いていると自然にいろんな感情をそこに重ねられるのです。ただ「歌わされている」だけなのに、こんなに感情を揺さぶられる声はすごいなと思いました。

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KOEのプロデューサーを務めたYAFFLE氏_©ROB Walbers

Yaffle 100あるものをゼロにすることは簡単なんです。いろんなものを削ぎ落とせばいいだけで。でも、そこには到達しない「ニアゼロ」に止めることが、一番難しかった。それは今までの音楽制作にはない面白さがありましたね。これまで手がけてきたプロデュース作品と違い、音楽的な背景のないアーティストの楽曲を作るというのは、この映画がなければできなかったことでした。

この作品に関わり、時代を掴む感覚を磨けたような気がする

――今回の楽曲制作を通じて、何か収穫となったことはありましたか?

川村 これまで「音楽と映画をどう関係させるか」ということを考え続けてきました。その中で、それなりの知識を得たつもりでいたのですが、チームの組み合わせ次第でまだ未知のメロディを創造できることを発見できたのは、大きな収穫でした。

網守 人間って、忘れるものとずっと頭のなかに記憶として残り続けるものがあると思う。今回の制作に関しては、すべてを「記憶」しておきたい、自分にとって大切な経験になったと思います。