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「僕のこと必要としてくれるチームありますか?」

 嘉男君、すごいよな……。心の中でこの言葉を何回繰り返したことか。

 ファイターズの最後4年間は毎年3割超えて、出塁率4割超えは当たり前。最高出塁率も獲得して、ベストナイン、ゴールデン・グラブ賞の常連になっても「自分はまだまだ。自分はへたくそ。周りの人はみんな上手い。練習せなあかん」て口癖のように言うてる。

 ほんでまたオリックスでも最高出塁率に輝いて、ついに首位打者も獲得して、35歳で53盗塁してFA権を得て、色んなチームから声が掛かって……でも謙虚。

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「大貴さん、どう思います? 僕のこと必要としてくれるチームありますか? FAとかは無理やと思いますよ」て。

 いやいや、あなた首位打者も、盗塁王も、最高出塁も、ベストナインも、ゴールデン・グラブ賞も、クライマックスシリーズでMVPも全部獲ってるやないの!!て心の中で叫んでましたわ。しかも俺なんかに普通に相談してくれるやんか。昔、野球やってて、そら大学野球で言うたら俺が1個上やったけども(笑)。

 そんでな、そんなんホンマのこと言うたらオリックスに残ってほしいわ!て言いたくてしゃーなかった涙。

 でも心優しいよっぴマンを目の前にすると言えないのよ。だって、絶対に人のことや他のチームのことを悪いようには言わへん人やから、あなたは。何か起きたら自分のせい、自分のことを常に過小評価してるくらい真面目。めちゃくちゃ謙虚。繊細で細やか。こんな身体デカいのに……なんなんよ、そのギャップ。ほんま魅力やねん涙。

 そんなあなたやからホンマにみんなに愛されてはる。ギータ柳田悠岐選手もマッチョ吉田正尚選手もよっぴマンに憧れてプロの世界でレギュラーになろうと思った子たち。普段着もお洒落な糸井さんに憧れてる。そして何よりも常におおらかで心優しく、人を褒めて、マイナスのことは言わず、自分のことを謙遜して、周りを盛り上げる人間性に惚れてる。

 自主トレで糸井嘉男に憧れて集まった糸井門下生はキャプテンになり、選手会長になり、球界を代表する選手になりました。これは間違いなく隠れて壮絶な努力をする糸井嘉男の姿を見て来たからこそ。阪神はもちろん日本ハムやオリックスの選手の誰に聞いても糸井嘉男のことを悪く言う選手はおりません。みんなに愛されてる。すごいよねぇ。ホンマにすごい。

 マッチョ正尚が付けている背番号7はよっぴマンに憧れて付けたもの。嘉男さんが現役続けられるんやったらどんなことでもする、僕がまた背番号34に戻してもええくらい……正尚くんの声が聞こえてきそうやもん涙。

糸井嘉男の人間性が不可能を可能にしてきた

「紙面を騒がせてしまってすみません」て……そんなん謝らんでもええのに。「またしっかりとご報告します」て……ファン思い、どんだけ律儀やねん。また心の中で突っ込んでしもたわ。

 でもね、嘉男君。振り返ればあなたの野球人生、常に不可能を可能にしてきた。京都の田舎の公立高校から強豪・近畿大学の野球部に入部して、そしてプロの門を叩いて、投手から野手に転向。投手では一度も一軍登板はなかったのに野手では1800試合近く試合に出てる。色んなタイトル獲って、WBC日本代表にも選ばれて、30代後半に入るときに盗塁王も獲りはった。

 ホンマは膝がめちゃくちゃ痛いのにずっと隠してプレーしてた。甲子園の広い外野を痛めてるはずの膝をかばうことなく走ってた。痛かったやろうに。でも、その膝もオフの徹底的なトレーニングと治療で治したやんか。心底、超人やと思った。不可能やと思ってたのに可能にした。これが糸井嘉男の野球人生やで。

 よっぴマンと同い年の鳥谷敬が引退するときに言うてたよな、気持ちはわかります……て。若い才能ある選手らが出てきたら、チームのためにも彼らに場を与えるべきという気持ちもわかります、でも身体は元気。まだ動ける。

 そして何よりも野球が好き。応援してくれてる人がおる。

 今も空いた時間はウエイトトレーニングで物凄い肉体を作り上げてる。40歳を超えて、月曜日の試合がない日はこっそり甲子園に行って、トレーニングして、室内で打ち込んで長いこと練習してる姿がある。タイガースのユニフォームをいつもきれいに飾ってる。道具も大切にしてる。そんな姿見てると涙出そうになる。

糸井と鳥谷と筆者 ©田中大貴

 糸井嘉男の人間性が不可能を可能にしてきた。こんなとりとめもない文章をつらつら書いてすんません。でも書きたくなってしまいました。引退会見やってくれたのにまだ引きずっとる。

 だって糸井嘉男のレーザービームもフェンス際の強さも柔らかいリストの打撃も狙いに行った時の打球の飛距離も鮮明に心に焼き付いとる。まだまだ糸井嘉男語録も生まれるはず……あ、引退してからもメディアの前で名言・迷言を生んでくれるか(笑涙)。

 気が付いたら3000字くらい書いてしまいましたわ。最後まで読んで下さりありがとうございます。

敬具

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