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「男性器をつけたい、とはならなかった」

――女性から男性への性移行の場合、子宮・卵巣・乳腺の摘出手術をする方が多いそうですが、まさきさんが性別適合手術を受けたのはいつですか?

まさき 僕は20歳すぎに男性ホルモンの注射をはじめて、24歳のときに胸オペ(※)を受けました。それだけで男性としてじゅうぶん通用したので、かなり満足できて。結局、戸籍上の性別を変えたかったのと生理があることが苦痛だったので、26歳で性別適合手術を受けて、子宮と卵巣を取りました。ただ、そこから男性器をつけたい、とはならなかったですね。

※乳房切除術のこと。乳腺で膨らんだ胸を平らにする。

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――男性器をつける/つけないでも選択が分かれるんですね。

まさき 男性のシンボルをつけない人のほうが圧倒的に多いと思います。

――男性器をつける手術はやっぱり大変なんでしょうか。

まさき 大変だと聞きますね。まずは尿道となる部分を作るために半年かけて育てるんです。そうやってできた組織を切り離し、腰や太ももから採った皮膚をかぶせて“竿”の部分を作る。それを股にくっつけるので、お金も時間もすごくかかるんです。セックスに使えるという方も中にはいるみたいですが、満足できる見た目や機能性に仕上がるとは限らないというのが現状みたいです。

 あと、僕の知る範囲の小さなデータベースの話ですが、男性器をつけたからといって必ずしも“男性としての自信”が補強されるわけではないのかな、という感じがしています。

――なるほど。

まさき 男性器の手術については難しい部分が多いですけど、今は「ナベシャツ」なんかめちゃくちゃ進化していていい商品がたくさん出てますから、ずいぶん生きやすくなっています。

胸を隠すための試行錯誤

――「ナベシャツ」とは?

まさき 胸を潰すための下着です。自分は中高生になって胸が膨らみ出したのが嫌だったのでさらしをまいたりしていたんですけど、途中からナベシャツを使い出しました。当時は防弾チョッキみたいな商品しかなくて、ジッパーを上げると胸がべチャッと平らになるんです。

 で、最初は布だったのが数年でメッシュタイプとかいろいろ出てきて、通気性も良くて最高!みたいな(笑)。