女性としての性を割り当てられて生まれたが、現在は男性として生きる、石川まさきさん(38)。女性のパートナーと結婚し、その後、実兄から精子提供を受けて子どもをもうけ、今や2児の父に。さまざまなセクシュアリティの人たちが集うバーのオーナーとしても活躍しています。

「女」として生まれた違和感から後に「男」であることを自覚し、外見を変化させていったまさきさんの歩みを聞きました。(全3回の2回目/最初から読む

 

◆◆◆

ADVERTISEMENT

「お兄系ギャル男」だった過去も

――刑事の方が言っていたんですが、ふらりと入った定食屋に自分と同じ刑事がいると、お互いに雰囲気で気づくらしいんです。で、「うむ」みたいな感じでアイコンタクトし合って終わるみたいな話を聞いたことがあるんですが、まさきさんも、「この人は自分と同じだな」って街で気がついたりしますか。

石川まさきさん(以降、まさき) わりとわかりますね。アイコンタクトみたいなこともします。「僕も同じだよ」みたいな(笑)。いくらホル注打って男性化しても、線の細さとか女性だったときの清潔感ってなかなか抜けないんですよ。

手をつないで歩く、まさきさんと次男(本人提供)

――ホルモン注射は「ホル注」って言うんですね。その「女性らしい清潔感」って、「男らしく」ありたいときには邪魔なものですか。

まさき いや、僕は全然いいと思いますね。たしかに男臭い、ワイルドな雰囲気に憧れはありますけど、今の時代って昔ほどマッチョさが求められなくなっていますよね。

――オラついた感じより、中性的な雰囲気の方が多いような気がします。

まさき 僕が思春期のときはB系が主流で、ダボダボの洋服に腰パン、みたいなのが多かったんです。でも、FTMはもとが女性なんで小柄な人が多いからブカブカ具合がすごいし、そんな姿で肩で風切って歩くのはダサいなと思っていました。だから僕はそっちには行かず、お兄系ギャル男になりました。

――今はナチュラルなまさきさんにもそんな歴史があったんですね。

まさき 黒歴史ですね(笑)。『men’s egg』で「性同一性障害(※)のお兄マン」みたいな感じで載ったこともあります。

※2019年、WHOは性同一性障害を精神疾患から除外することを決定。現在は「性同一性障害」ではなく、「性別不合」「性別違和」と表される。