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「親からもらった体はいじり倒したけど…」トランスジェンダーパパ(38)が語る、どうしても“変えられなかったもの”

「親からもらった体はいじり倒したけど…」トランスジェンダーパパ(38)が語る、どうしても“変えられなかったもの”

石川まさきさんインタビュー #2

2022/09/24
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高校卒業の前日、母親にカミングアウト

――それは同性愛者に対する差別ということでしょうか。

まさき 周りからはレズビアンだと思われていたので、そうでしょうね。彼女とイチャイチャしているところを見られたのをきっかけに、女の子のグループから「気持ち悪い」とハブられました。ただ、このときには「自分はレズじゃない。僕は男だ」という思いがありました。

――周りに理解者はいましたか?

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まさき 1人いました。その子がいなかったらやばかったかもしれないですね。共学校でしたが、うちのクラスは女子クラスで、その後、順番にクラスの子がハブられる陰湿ないじめがありました。ただ、それと同時に徐々にみんなにもカミングアウトしていって理解してもらえた感じです。

 で、総仕上げじゃないですけど、隠しているのもしんどかったので、高校卒業の前日に母親にカミングアウトしました。ただ母はひどく取り乱してしまって。

兄から届いたメッセージ

――お母さんはまさきさんを「女の子」だと信じていたんですね。

まさき メールでカミングアウトしたんですけど、読んだ途端に泣き叫んだらしいです。そのときたまたま母のそばにいて事情を知った兄が、「死なないで帰ってこい」と僕にメールをくれました。

 当時にしては珍しいと思いますが、兄はセクシュアルマイノリティに対する知識や理解があったようで、当事者の自殺率の高さを知っての声がけだったようでした。

――お兄さんの存在は大きいですね。

まさき それから兄とは一気に距離が近くなりました。実際、精子ももらっていますしね(笑)。母とはなかなか距離が縮まらないままでしたが、言葉を尽くして「今僕は幸せだから」って話し続けています。

――その後、26歳のときに性別適合手術を受け、戸籍の性別を女性から男性へと変更しました。

まさき 子宮と卵巣はタイでサクッと取っちゃいました。感慨とかはなく、「やっとこれで生理とおさらばだ!」と、晴れやかな気分でしたね。

 22歳からホル注をはじめて、次の年には胸を取ってと、体の見た目はガンガン変えていたんですが、僕の場合は名前を変えることに強い抵抗があって。