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――さらしから着実に進化しています。

まさき ちょうど自分のときは過渡期だったんだと思います。それこそ、テーピングとか絆創膏で乳首を隠していたこともあったのでめちゃくちゃ肌荒れもしましたし。それに比べたら今は本当にいい時代になりました。ただ、逆に情報がありすぎてしまって迷う子は増えましたよね。

――「選択肢」ができたからこその悩みというか。

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まさき そういう子がうちの店に来たりしますね。性別適合手術のための病院選びとか、それこそいいナベシャツが知りたいとか、あと自分は何なのか、とか。ネットを使えば情報はいくらでも手に入るけど、リアルで会いたい、話したいという欲求はまた別なんですよね。

 

かつて「女性」だったことは一生ついてまわる

――まさきさんのお店に訪れる方はやっぱり話したい“なにか”があると。

まさき そうですね。たとえば僕なんかは、社会のなかで「男性」として生きているんですけど、性別適合手術をして女性としての生殖機能がなくなろうが、戸籍上の性別が男性に変わろうが、家族を持とうが、自分がかつて「女」だったことは一生ついてまわる。ふとした瞬間に、どうしても意識してしまうんです。

 わかりやすい場面だと、カミングアウトをしていない友人や知人から温泉やサウナに行こうと誘われたときとか。行けないし、その理由を言えないんですよね。だいたいうまくぼかして対処するんですが、やっぱり本音で話したくなるときもある。そんな気持ちを抱えて僕のお店に来てくれているお客さんはけっこういると思います。

 ここでだけ本当の話をして、一歩外に出たらまたいつもの生活に戻る、という方もたくさんいるんじゃないかな、と。

写真=山元茂樹/文藝春秋

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