フランス革命を背景に、波乱の人生を生きた人々を描いた池田理代子さんの『ベルサイユのばら』(以下、『ベルばら』)。誕生から50年経っても色褪せることのない魅力を放つのはなぜなのか。作家の三浦しをんさんがその秘密に迫った対談を、『CREA』(2022年秋号)から転載します。(全2回の1回目。後編を読む)
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三浦 池田先生は24歳で『ベルばら』をお描きになったんだと気づいたとき本当に衝撃を受けました。
池田 私が大学に入ったのは学園闘争が盛んなころでしたから、運動にも参加しましたし、そういう思想にも感化されて、経済的にも自立したくて家出したり。
三浦 学生運動の経験が作品に影響を与えたところはありますか。革命に興味を持つようになったり、『ベルばら』を描く何かのきっかけになったとか。
池田 もともとは、高校時代に読んだシュテファン・ツヴァイクの伝記『マリー・アントワネット』にものすごく感銘を受けたことです。いつかマリー・アントワネットの生涯を何かの形で表現してみたいと。高校生のときには『ベルサイユのばら』というタイトルだけはもう決めていました。
三浦 そうだったんですか!
池田 1789年の7月14日、フランス革命の発端となったバスティーユ襲撃のときに権力側の軍隊でありながら、市民側に寝返ったのが「フランス衛兵隊」です。その衛兵隊を指揮した隊長がいまして、作中で活躍させたいと思ったんです。私はまだフランスに行ったこともなく、資料もほとんどなかったので、それを逆手に取って、隊長は女性に変えた方が自由に描けるなと考えました。