このままでは日本経済は破綻する——。「文藝春秋」2022年10月号より、ジム・ロジャーズ氏「日本経済SOS 最後のチャンスを逃すな」の一部を掲載します。

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30年、50年後の日本を想像するや……

 私の愛する日本は、一体どうなってしまうのでしょうか。このままでは日本経済は崩壊してしまう。その元凶は、少子高齢化、多額の財政赤字……日本の多くの方がすでに認識している問題です。30年、50年後の日本を想像するや暗澹たる気持ちになります。

 10年以上前から私は日本経済の問題点をずっと指摘してきました。ところが、政治家や官僚はこれらの問題を解決するどころか、先送りし悪化させてきたのです。

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 1969年、ジョージ・ソロス氏と共に、クォンタム・ファンドを設立したジム・ロジャーズ氏(79)は、10年で4200%という驚異的なリターンをたたき出した、伝説の投資家として知られる。37歳で引退すると、コロンビア大学で教鞭をとる傍ら、コメンテーターとして活発に持論を発信。来日経験が豊富で親日家であるロジャーズ氏は、これまでも日本経済について警鐘を鳴らしてきた。

コロンビア大学で教鞭を執るジム・ロジャーズ氏 ©時事通信社

 これまで日本の政治家は、無駄な公共事業を続けて財政赤字を膨らませてきました。こうした公共工事は、地元有権者のご機嫌をとる以外、何のメリットもないばかりか、日本の状況を悪化させてきた。

 日本が抱える長期債務残高は2021年度末の予算によると、国だけでも1000兆円を超える。その後も年々、恐ろしいペースで借金を増やし、プライマリーバランスの黒字化もできず、日本は借金を返すために公債を発行する悪循環から抜け出せないでいます。

“アベノミクス”は失敗だった

 その悪循環をさらに悪化させたのが、アベノミクスの金融緩和です。

 日本政府は好きなだけ国債を発行し、日銀が国債や投資信託を買い続けてきました。やがて日本の財政破綻の可能性が高まり国債が買われなくなれば、日本政府は金利を引き上げざるを得ない。そうすると、日本は高金利によってさらに膨らんだ莫大な借金を抱えることになる。その場しのぎの弥縫策が、日本経済を破滅に追いやろうとしているのです。