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「円安は進む。政府・日銀はとんでもない過ちを…」投資家ジム・ロジャーズが予言する“50年後の日本”

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今後さらに円安は進む

 さらに2016年、日銀は、「金融緩和強化のための新しい枠組み」として指定した利回りで国債を無制限で買い入れることを決めました。これは事実上、紙幣を無制限に刷るということです。

 現在の為替レートは、1ドル140円にも迫る勢いですが、今後さらに円安は進むはずです。私からしてみれば、むしろよくぞ今まで、円安にならずに来たと思うくらいです。

 歴史的にみて、財政に問題を抱えた国の自国通貨はすべて値下がりしてきました。20年前のイギリスは、1ドル=0.6ポンドのレートでしたが、今は1ドル=0.8ポンドまでポンド安が進行しています。

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 また自国通貨の価値を下げて、中長期的に経済成長を遂げた国は存在しません。第2次大戦後、日本が高度経済成長を遂げられたのは、高品質な商品を輸出し、巨額の貿易黒字とし、世界最大規模の外貨準備高を有したからです。

アベノミクスの功罪とは

 たとえば自動車産業。日本は、1980年には生産量で米国を凌駕し、1986年には米国で販売される台数の約4分の1を供給するようになりました。

 日本が高品質を武器とする一方で、対する米国は金融緩和政策を実行していました。ドルの価値を下げることによって、車が売れるに違いないと考えたわけです。ところが米国車が売れるどころか、円高によって日本のメーカーが海外から原材料を輸入しやすくなるなど、日本メーカーの成長を後押しすることになった。

アベノミクスは昔のアメリカのよう

 たとえば同じタイプの車が日本とアメリカのメーカーから1万ドルで販売されているとします。そこで1ドルが100円から70円に3割下がれば、日本車は1万4000ドルに強制的に値上げさせられる。ところが、通貨の価値が下がれば、米国のメーカーにとっても原材料などの輸入コストは上がる。となると、米国メーカーも国内で1万ドルでは販売できず、値上げを余儀なくされます。

 そして何が起きたのか。政府に甘やかされた米国のメーカーは日本の品質に太刀打ちできない企業体質となり、その結果、自動車競争に敗れてしまいました。

 この当時のアメリカのように、いまの日本政府と日銀はアベノミクスで紙幣を刷り続けることによって、日本経済を救済しようとしています。とんでもない過ちです。