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「お前は無価値だ」「女の子は映画監督にはなれないよ」“映画業界の現実”を見た女子大生がそれでも逃げなかった理由

『「超」ブランディングで世界を変える 挑戦から学ぶエンタメ流仕事術』 #1

2022/09/11

source : ノンフィクション出版

genre : エンタメ, 芸能, テレビ・ラジオ, 映画

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 最終的にはそう考えて、とにかくプロデューサー的な仕事に携われそうなマスコミ関係に絞って就職活動をして、大手の広告代理店に内定をもらいました。

 そして、あとは就職する春を待つばかり、のはずだったのですが……。

撮影現場での「お前は無価値」という洗礼

「お前さ、面白い仕事あるぞ」

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 映画プロデューサー山本又一朗さんの映画制作会社フィルムリンク・インターナショナルが、アメリカで新作を撮影するので英語ができる制作助手を探している。

 私を呼び出してそう教えてくれたのは、大学の担当教授でした。

 当時、山本さんは、『太陽を盗んだ男』『ベルサイユのばら』『がんばれ!!タブチくん!!』など、実写やアニメの新進気鋭の国際派プロデューサーとして注目されていました。しかも、アメリカでの映画制作の現場に入れるチャンスがやってきたわけですから逃すわけにはいきません。私としては願ってもない話です。

 かなり前のめりになって説明会に出向くと、ロケ場所は「アメリカ」ではなく、なんと「アフリカ」だというのです。映画のタイトルは『ピラミッドの彼方に ホワイト・ライオン伝説』。どこから見てもアフリカの映画です。

「アメリカとアフリカじゃ一文字違いで大違いじゃん……」

 驚き、がっかりしたものの、アフリカでの撮影も貴重な経験になりそうです。

 ただ、その映画の現場はフリーランスとして1回きりの仕事でした。その先があるかどうかは全くわかりません。

「それでもまあ、いつか話のタネくらいにはなるだろう」

 ここでも私は、一度決めたら突き進むのみ。私は決まっていた就職の内定を断って、映画制作の現場に足を踏み入れることにしました。

 卒業後、すぐに日本から遥はるか遠いアフリカのケニアに飛び、7ヶ月間にも及ぶ撮影が始まりました。撮影現場に入ると、制作助手とは名ばかりで、実情は一番下っ端の通訳のできる雑用係でした。

壮大なアフリカの大地 ©iStock.com

 学生時代、アルバイトで東映や日活ロマンポルノの助監督もしましたが、一つの作品に最初から最後まで関わるのは初めてでした。プロの現場では大学で学んだ映画理論や実践なんて何の役にもたちません。高卒でたたき上げた年下の助監督の足元にも及ばない。私にできたのは、必要な時の通訳と先輩から言われた雑用をこなすことだけ。現場で私に何かを期待してくれる人なんて誰一人いないのです。