確かに、現場ではどのスタッフも、誰に指示されることもなく先を読み、目の前の一瞬一瞬に集中して、それぞれの持ち場で自分のするべき仕事に徹していました。だからこそ、そこにはピリピリとした独特の緊張感が走ります。
現場に入ってしばらくすると、徐々に私もその空気に慣れ、自分なりにするべき仕事を見つけられるようになっていきました。すると、最初は私をよそ者扱いしていたベテランのスタッフも少しずつ心を開いて、私を認めてくれるようになりました。まだまだ半人前でしたが、自分たちの仲間としてやっと認めてくれたことがうれしかった。
半人前の私が実力をつけるために
自分は作品を作るための小さな歯車どころか、その歯車についているほんの小さなビス1つほどの存在かもしれない。それでも、過酷な現場にしがみついて完走すれば、確実に自信になっていく。そのことを、私はアフリカの現場で学びました。
ただ、完走するためには、自分の力を100%出したとしても、それではとても足りません。半人前の私の100%は、その世界の名だたるプロフェッショナルの前では、ほんの20%ほどでしかない。それを少しでもパワーアップするためには、自分が持っている力の120%を出しきって完走することが必要です。
先輩たちから見ればそれでもたいして変わりませんが、120%の力で完走できた時、それが自分にとっての新たな100%の力としてしっかりと定着します。それが実力となり、自信となって、幾重にも積み重なっていくのです。
「今日の私は、自分の100%の力を出せているか。120%の力を出すにはどうすればいいのか」
もちろん失敗を繰り返しながらですが、現場では毎日そんなことを考えながら仕事をしていました。