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「あまりにも辛くて、兄を殺すことすら考えた」悲惨すぎる家庭内暴力の実情…被害者が考える“最も現実的な解決策”とは

2022/09/13

genre : ライフ, 社会

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 私が就職と同時に実家を飛び出してから、両親も含めて家族との連絡を一切遮断することに成功したのは、精神疾患が悪化して働けなくなり、毎日襲いかかるフラッシュバックと悪夢に疲れ果てて自殺企図をくりかえしたあと、29歳になる頃だった。

 母親をあの地獄から逃がしてやれなかったことを、心の底から本当に悔やんだ。母親を置いて逃げた罪悪感に押し潰されそうになりながら、31歳になった今も闘病を続けている。

まずは自分だけでも逃げることを考える

 こうした実体験を踏まえ、冒頭の相談者に何かできるアドバイスがあるとすれば、まずは自分だけでも逃げることを考えたほうがいい、ということ。それは決して親を見捨てる行為ではない。もしも親を救いたいと思うのなら、自分が潰れてしまっては元も子もない。地獄にいながら逃げる気のない親を安全な場所に移すというのは、どれだけ頑張っても難しい。自分だけでも逃げないと、地獄の中で親と共倒れになってしまう。

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 自分が安全な場所に身を置きながらであれば、見える景色が途端に変わる。例えば経済的に自立できている場合、何かあったとき、親にとっての逃げ場を用意しておくこともできる。安全を脅かされない環境づくりは、暴力による支配から抜け出すのに必要最低限、不可欠なものだ。

 まずは自分ひとりだけでも抜け出して、生活再建に向けて必要な公的支援や治療を受けること。そして、生活の基盤を整えてから、親やきょうだいとの関係性について考えること。

 それがもっとも現実的な「家庭内暴力の解決策」であると私は考えている。

 まずは自分だけでも逃げてほしい、というと、ほとんどの人は「でも……」と尻込みしてしまうが、家庭内暴力などの問題において「相手が変わること」を待っていてもキリがないというのは、本人が一番わかっていることだと思う。私に相談をくれる前に、きっと何年もずっと悩んで、状況がよくなることを期待して、裏切られて絶望して……を繰り返してきたのだろうから。

 潰れるまで我慢し続けていたら、いずれ親のことだけでなく、自分のことすら自分でできなくなってしまう。私のように「もっと早く抜け出せていれば」と後悔する人が、ひとりでも少なくなればいいと思っている。

「あまりにも辛くて、兄を殺すことすら考えた」悲惨すぎる家庭内暴力の実情…被害者が考える“最も現実的な解決策”とは

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