文春オンライン

「あまりにも辛くて、兄を殺すことすら考えた」悲惨すぎる家庭内暴力の実情…被害者が考える“最も現実的な解決策”とは

2022/09/13

genre : ライフ, 社会

note

警察は血の繋がりがあるだけで「家族同士で解決してください」

 こうした現状を「異常だ」と思う理由は、通常、誰かから暴力を受ければ傷害や暴行事件として扱われるにも関わらず、加害者と被害者に血の繋がりがあるというだけで、警察では「家族同士で解決してください」と言われ、さらには「暴力を振るう側は本当はつらい思いをしていることに気付いてあげるべき」「暴力を受けても抵抗せず、愛情を示し続けなくてはならない」と加害者をケアしたり、寄り添ったりすることを被害者に対して強要している点である。

 確かに、家庭内暴力を起こす子どもの場合は何かしら精神面や発達面で問題を抱えているケースもある。しかしだからといって、暴力を振るわれて深刻な被害を訴え出ている人間の救済については、ろくな解決策の提示や言及がないまま、被害者がさらなる我慢を強いられ、それだけでなく加害者の「サポート」の役割まで押し付けられている現状は、あまりにも惨たらしいものだと思う。

兄による家庭内暴力の被害に遭い、死ぬことも考えた

 事実、私が兄から家庭内暴力の被害に遭い、苦しんでいた10代から20代までの十数年間、どれだけ頭を悩ませても兄の暴力から家族を救う方法は見つからなかった。私の場合も冒頭の相談者と同じように、母親は「私の子だから見捨てるわけにいかない」と兄をかばい続け、父親は私や母親が殴られていても「我関せず」で一切介入しようとしなかった。

ADVERTISEMENT

 経済的に自立できない年齢だった私は逃げることもできないまま、暴力をただ受け続けることしかできず、親族からも「そのうち暴力も落ち着くよ、もう少しの我慢だから」「お母さんのことを支えてあげてね」などと言われるだけで、誰一人手を差し伸べてくれる大人はいなかった。

 あまりにも辛くて、何度も死ぬことを考えたが、母親の悲しむ顔を想像しては思いとどまるのを繰り返した。兄を殺すことすら考えたが、私がひとりで自殺するよりも、母親はずっと長く悲しむことになるだろうと思い、それも失敗に終わった。