「飾りじゃないのよ涙は」のカッコよさ
「SOLITUDE」の作曲はタケカワユキヒデである。「ガンダーラ」「モンキー・マジック」などゴダイゴ曲ではあんなにキャッチーな曲を書くのになぜ! とも思うが、いやいや、明菜の魅力と実力と世界観は、クリエイター魂を思いきりくすぐり、挑戦へと誘うのだろう。
天才の周りには天才が集まり、切磋琢磨し、ギラギラに才気を尖らせる。彼女のシングルだけを見てもそれがわかる。歌の中に少女マンガを練りこんだかのような「セカンド・ラブ」「トワイライト -夕暮れ便り-」を作った来生たかお・えつこコンビ。狭い道をオープンカーでガリガリ走るような疾走感で「半分オトナの疾走」を見事描いた作詞家・売野雅勇。「飾りじゃないのよ涙は」で世界一カッコいい「ho ho」を明菜に与えた井上陽水!
持ち前のオリエンタル爆弾を「AL-MAUJ (アルマージ)」で炸裂し、アラビアンナイトの美を丸々召喚することに成功した佐藤隆。
オリエンタルといえば、C-C-Bのベース、関口誠人も「二人静ー『天河伝説殺人事件』」で独特な「妖」を含む世界観を確立し、才能を拡散させている。
天才・坂本龍一も明菜に楽曲を提供している1人。NOKKOとのコンビで放った「NOT CRAZY TO ME」はさすがといおうか、玄人向けといおうか、ガックンガックンと音が上がって下がって、確かに彼女以外は歌えないような明菜チャレンジな楽曲だった。このままどんどんコアな方向に行くのかと思ったが、次にリリースされたのは小室哲哉による「愛撫」で、これが、サビが頭から離れないコムロ節全開。「SOLITUDE」で戸惑い「DSESIRE」でホッとしたあの感覚よ再び……。
あれから齢を重ねた今、改めて聴けば「SOLITUDE」で心地よさを感じたように、「NOT CRAZY TO ME」も発見がある気がする。大人になってわかる明菜曲はきっと多い。