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“絶望”の先を見る中森明菜が再始動…「プライベートを発信してほしいとは思わない」理由

2022/09/29
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明菜と最も多くトップ争いをしたのは…

 そんな中、彼女と最も多くトップ争いをしたのはチェッカーズ。チェッカーズが初めてランクインしたのが2ndシングル「涙のリクエスト」。この曲は火が着くのは遅かったがロングヒットとなり、7週連続1位に輝いた。その記録を止めたのが、明菜の「サザン・ウィンド」。それ以降、「十戒」vs. 「星屑のステージ」、「飾りじゃないのよ涙は」vs. 「ジュリアに傷心」……と、実にチェッカーズの13thシングル「I Love you, SAYONARA」まで、すべて明菜と1位、2位を争っている。

 なんというライバルな運命! それでもこの2組の間にはいつも明るい同級生感があり、観ていてほのぼのした。歌以外ではどこか構えているような明菜が、藤井フミヤやメンバーの面々と並ぶときは本当に等身大に見え、ホッとしたり、羨ましい~! と思ったりしたものである。

中森明菜(1985年当時)

明菜が首位争いを逃した“あの難曲”

 明菜vs. チェッカーズのトップ争奪バトルのなかで1枚だけ、明菜が首位争いを逃した曲がある。13th「SOLITUDE」は「ザ・ベストテン」で最高位2位(同時期チェッカーズは「神様ヘルプ!」で1位を獲得)。

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 安全地帯の「碧い瞳のエリス」が強かった、というのもあるが、ランキングが伸びなかったのもなんとなくわかる。だってこの曲、難しかったもの! 

 インテリジェンスなイメージは十二分に伝わるのだが、普通のミーハー学生だった私にとって、この曲は「いよっ、待ってました!」とは言い難かった。彼女といえば「いいかげんにしてー!」「アモーレー!」と伸びに伸びるビブラートがテッパン。それが一切無いどころか、どこがサビかすらよく分からない。振り付けもおとなしい。困った。でも明菜が歌うんだからいい曲のはず、と思って聴いていた。ミーハーとはそういうものである。

デビュー当時の中森明菜 ©共同通信社

 この次に「DESIRE」というビブラートもサビもエキサイティングな一曲が爆発したので、リリースの流れとしては最高にドラマチックであったのだが。

「SOLITUDE」はライブでも歌われており、50を過ぎた今、この曲から出る浮遊感の心地よさが、少しわかった気がした。